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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

年をとると筋肉のタイプはどう変わる?

第28回 加齢とともに速筋線維が減る、その逆はない

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

運動神経が死滅すると筋線維は新たな“親”を探す

 ヒトの場合、筋肉は加齢とともに萎縮します。45歳を過ぎると、太ももの筋肉などは目立って減っていきます。

 具体的には、個々の筋線維が細くなりながら、筋線維の数も目減りします。また、I型とII型の比率でいうと、II型、つまり速筋線維の割合が減っていきます。つまり、単に筋肉が細くなるだけではなく、II型に要求されるような素早い力発揮の能力が落ちてくるのです。

 では、II型が減ってI型が増えるという、タイプを超えた筋線維組成の変化がなぜ起こるのでしょうか? 普通では起こらないといわれていたものが、なぜ加齢するだけで起こってしまうのでしょうか?

 今のところ、はっきりとした結論は出ていませんが、推測はできています。私の研究室でも高齢のマウスを使って実験を行っているところですが、加齢によって筋線維の数が減るという現象は、どうも神経が引き金になっているらしいのです。

 筋肉は運動神経(α運動ニューロン)に支配されています。この運動神経は、年をとるに従って1つ、また1つと脱落して死んでいくらしいのです。多ければ1000本以上、少なくとも100本程度の筋線維を支配している神経が死んでしまうと、支配下にあった筋線維に指令が届かなくなってしまいます。これは、親がいなくなってしまったような状態といえるでしょう。

 そこで筋線維はどうするか。新しい親を探します。筋線維全体が神経の接合部のような様相を呈し、いつでもどこででも神経とつながれる状態になります(普段はほかの神経とつながらないようにプロテクトされています)。すると、ほかの神経線維が枝分かれしてきて、親を失った筋線維にくっつき、新たな支配関係が生まれるのです(そこでまたプロテクトがかかり、ほかの神経とはつながらなくなります)。

 仮にII型の運動神経が死滅して、そこに新たにI型の運動神経がつながったとすると、その筋線維はI型になってしまいます。そこでタイプの移行が起こるのです。

[画像のクリックで拡大表示]

 そのようにしてII型からの移行が増えていくことで、次第にI型の割合が増えていくと考えられます。これが真実だと証明されれば、今後はアンチエイジングの観点で新たな研究が進むかもしれません。

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