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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉の出力を決める関節という「変速器」

第4回 「関節のテコ作用」によって末端の運動が増幅される

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

筋肉分子「サルコメア」が筋肉の伸び縮みの特性を決める

 筋肉の変速器のシステムには、もう1つの段階があります。それは「サルコメアの長さ」。サルコメアとは筋肉が収縮する1つの単位で、これが長いか短いかによって、筋肉が発揮する力やスピードが変わってきます(図参照)。

 サルコメアは、筋肉の収縮を起こすミオシン分子のメカニズムによって、基本的には一定のスピードで縮みます。したがって、短いサルコメアが2つつながっていると、2つが同じ速度で縮むので、全体としては2倍のスピードになります。

図 筋の構造による力学的性質の改良
『筋肉学入門』(講談社)より引用
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、1つのサルコメアが2倍の長さ(短いサルコメア2つ分)になると、速度は半分になりますが、力は2倍になります。

 エビやカニといった甲殻類のハサミの中の筋肉は、筋線維が羽状筋であるだけでなく、サルコメアが非常に長い。つまり、筋線維の中も大きな力を出せるような構造をしているのです。

 ヒトの筋ではサルコメアの長さに大きな違いはありませんが、前述した羽状筋・平行筋という筋の構造、速筋・遅筋という筋線維タイプ、そして関節のテコ作用によって、筋肉の力やスピードは決定されます。これらすべてが「スピード型」に設計された筋肉もありますし、すべてが「力型」の筋肉もあります。

 また、それぞれが複雑にミックスされたタイプの筋肉もあり、人間の体全体で見ると、実にさまざまなバリエーションが存在していることになります。ですから個々の筋肉の性質は、それほど簡単には説明できるものではないといえるでしょう。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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