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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉の出力を決める関節という「変速器」

第4回 「関節のテコ作用」によって末端の運動が増幅される

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。前回は「四肢の伸筋には羽状筋(うじょうきん)が多く、屈筋には平行筋(へいこうきん)が多い」という傾向があることを書きました。人体の筋肉の構成はなぜそうなるのか、解説していきましょう。

「跳ぶ」「伸び上がる」動きを作る伸筋は抗重力筋

 人間はいつも重力に抗して身体を支えていたり、跳んだり伸び上がったりしなければいけません。多くの場合、そのために働くのが伸筋で、これは「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」なのです。

 赤ちゃんがハイハイをするときも、肘を伸ばすことで重力に逆らって身体を支えます。成長とともに立ち上がるようになると、膝も伸ばさなければいけない。そこで力を発揮するのが抗重力筋である膝の股関節の伸筋なので、これらの筋肉には強い力が必要になるわけです。

身体を動かす筋肉のスピードと力に影響しているのは、全身の筋肉の質や構成に加えて、「関節のテコ作用」が強く影響している。(©decade3d-123RF)
[画像のクリックで拡大表示]

 それに対して、屈筋を使って関節を曲げる動作を行う際に大きな負荷がかかるというケースは、日常生活ではほとんどありません。重力に抗して肘を曲げる動作を行うのは、ダンベルカールをするときくらいでしょう。

 ヒトのルーツであるサルの仲間などは、木渡りをするときに肘を曲げることで身体を支えていると思いますが、ヒトは木にぶら下がったり渡ったりすることもあまりないので、上腕二頭筋に大きな力を発揮させるのは比較的特殊な動作ということになります。

 関節を曲げる動作は、何かが飛んできたときに顔や頭を防御したりするなど、どちらかというとスピードが求められることが多い。だから、筋肉もそういう構造になっているのです。

 このように、羽状筋・平行筋という筋線維の形態は、筋内部の変速器としての役割を果たしています(関連記事:「スピード指向型の「平行筋」と力指向型の「羽状筋」」)。自動車に例えるならば、羽状筋はローギア、平行筋はトップギアということになるでしょう。

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