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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

どんなトレーニングをしても、筋肉は「持久力がある」方向にシフトする

第27回 トレーニングによって筋肉のタイプはどう変わるか?

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

持久力→瞬発力へ筋線維を変化させる方法

 では、持久性の高いタイプから瞬発力の高いタイプへの変化は絶対に起こらないのでしょうか。

 実はその方法が、ないわけではありません。IIaではなくIIxを増やそうと思ったら、サボるという戦略があります。筋肉を使わなければIIxが増えていくということは、実験によって証明されているのです。宇宙飛行士が無重力空間で筋力を使わない状況になったり、骨折などのケガによって長期間ギプスで手足を固定していたりするだけでも、筋肉の中ではIIaが減りIIxが増えるという変化が起こってきます。

 ですから、IIxを増やしたかったら、基本的には怠ければいい。IIxのほうがIIaよりスピードが速いわけですから、とことんスピードを追求していきたいという場合は、トレーニングをサボることが最良の選択ということになります。ただし、サボりすぎると今度は筋肉が萎縮して弱くなってしまいます。それに注意しながら、ちょうどいいタイミングでトレーニングを再開する。そのコントロールができれば、筋肉を一番いい状態にもっていくことができます。

 とはいえ、これは現実的にはなかなか難しい問題です。スポーツは一発の力発揮で勝負するわけではありませんので、仮にIIxを増やすことに成功したとしても、持久力が落ちたら最終的にマイナスになってしまうかもしれない。ですから、IIxだけを増やすという考え方はあまりオススメしません。

 力もあり、スピードもあり、なおかつ持久力もそれなりにあるという状態をつくり出し、その状態を維持することを考えたほうが勝つためには適している、といえます。

筋線維がシフトするまでの時間は?

 トレーニングを開始してから、どのくらいの時間でIIxがIIaに移行するのかを調べた研究があります。それによると、2週間くらいで変化が起こる。すべてが一気に変わるわけではありませんが、わりに早い段階で変わり始めるのです。これはIIaからIIxへの変化も同じだと思われます。おそらく、筋肉の中では2週間ほどで代謝的な対応が起こり、筋線維の性質そのものを変化させるという仕組みがあるのでしょう。

 自分自身の現役時代を振り返ってみても、忙しくてトレーニングができない時期が1週間~10日ほどあると、再開したときに回数が上がらなくなるということがよくありました。決して軽かったバーベルが重くなるわけではなく、例えば5回上げられたバーベルが3回しか上げられなくなる。そういう経験をもっている人は多いのではないでしょうか。これは筋力の問題というより、筋線維のタイプが変わることで引き起こされる現象ではないかと思います。

筋線維は基本的にどんなトレーニングをしても、
よりスタミナのあるほうへシフトしていく
と考えていい。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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