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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

スピード指向型の「平行筋」と力指向型の「羽状筋」

第3回 ふくらはぎの筋肉は「カニの爪」と同じタイプ!

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

 平行筋はスピードはありますが、どうしても羽状筋に比べると力で劣ってしまいます。冒頭の車の例でいうと、平行筋はレーシングカータイプ、羽状筋はブルドーザータイプのエンジンということになるでしょう。このように、体の中で筋肉が要求されている仕事、役割に応じて、筋肉の構造自体にも違いがあるのです。

ふくらはぎを構成する腓腹筋(ひふくきん)は典型的な羽状筋。(©Jasminko Ibrakovic-123rf)
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“力こぶ”を作り出す上腕二頭筋は代表的な平行筋。(©Andrzej Wilusz-123rf)
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伸筋は羽状筋、屈筋は平行筋が多い

 羽状筋の例として一番わかりやすいのはカニの爪です。食べる時に見てみても、1本1本の筋線維が非常に短いですよね。それが爪の中にぎっしり詰まっているので、カニが物を挟む力は極めて強い。一度挟んだら、なかなか離れません。そうした強い力があるわりには、速いスピードではさみを動かすことはできません。これぞまさしく羽状筋の特徴です。

 人の場合は、「四肢の伸筋には羽状筋が多く、屈筋には平行筋が多い」という傾向があります。例えば、ふくらはぎの腓腹筋は典型的な羽状筋。羽が両側に開くようにハート形をしているのが外観からもわかりますよね。大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)も羽状筋です。それもかなり角度が深い羽状筋で、大きな力を出すために最適の構造をしています。

 一方、いわゆる“力こぶ”を作り出す上腕二頭筋は代表的な平行筋。太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)は構造的には羽状筋なのですが、羽の傾きが非常に浅く、平行筋に近い羽状筋といえます。足関節を伸ばす腓腹筋(ひふくきん)に対し、つま先を上げるために働く前脛骨筋(ぜんけいこつきん)も羽状角がせまい羽状筋です。

 このように腕や脚を伸ばすための筋肉は「力」に重点が置かれ、曲げるための筋肉は「スピード」「動作の大きさ」に重点が置かれている、という設計がなされています。そして意外かもしれませんが、人間の体全体で見ると、平行筋の数は少なく、羽状筋のほうが圧倒的に多くなっています。一般的なイメージとして、平行筋こそが典型的な筋肉のように思いがちですが、実は人間の体の中の勢力としては、羽状筋のほうがはるかに巨大なのです。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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