“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は筋肉の質を大きく2つに分ける「平行筋」と「羽状筋」について。筋線維の並び方によって、スピード指向型の筋肉(平行筋)と力指向型の筋肉(羽状筋)とがはっきりと分かれています。
役割によって、筋肉の設計が違う
これまでお話ししてきたように、筋肉の第1の役割は運動の「エンジン」であること(関連記事:「運動のパフォーマンスを左右する4要素」)ですが、そのエンジンにもいろいろなタイプがあります。車で考えてみても、レーシングカーとブルドーザーとではまったく違いますよね。速く回転できる仕組みが必要なのか、大きなトルクが必要なのか、その目的によって、基本的な設計から変わってきます。筋肉も同様で、速く動くことが求められる筋肉があれば、速く動かなくてもいいから強い力がじわりじわりと出たほうがいい筋肉もあり、それぞれ設計が違うのです。
筋線維1本1本にも収縮速度の速いタイプ、収縮速度は遅いけれども持久性が高いタイプがありますが、それについては回を改めてお話しするとして、ここではそうしたミクロな性質ではなく、もう少しマクロな視点で筋肉がどうできているかということを説明します。一口にいうと、それは筋線維の並び方。それにより、スピード指向型の筋肉と力指向型の筋肉とがはっきりと分かれるのです。
筋線維が平行に走っていて中央部分が太くなっている、よくマンガなどでも見かけるような形の筋肉。これを「平行筋」と呼びます。かつては紡錘状筋(ぼうすいじょうきん)といっていましたが(今もそう呼ぶことがあります)、最近は欧米の用語を直訳して平行筋と呼ぶケースが増えています。この筋は文字通り、筋線維の1本1本が筋肉の長軸に向かってほぼ平行に走っています。
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