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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

運動のパフォーマンスを左右する4要素

第2回 「筋肉を強くすればスポーツで勝てる」は勘違い!

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

筋トレで鍛えてもパフォーマンスが上がらないことも

 ところがスポーツ分野では、この勘違いをしている人が少なくないようです。運動のレベルを上げるために筋力アップは第1の要素ですが、筋肉ばかり強くなってもスポーツで勝てる身体づくりができたとはいえません。筋トレをたくさん行っても全体のパフォーマンスが上がらないという結果があるのであれば、総合的な見方で自分自身の現状を分析し、次に何をしなければいけないかを考える必要があります。トレーニングをしていく上においては、その総合的な視点が極めて重要になってきます。

 むしろ以前より「筋肉がついた」ということは、以前とは違うエンジンが積まれた状態といえますから、今までと同じように運動をしていてはダメなのだと考えるのが適切でしょう。エンジンが強くなった分だけ、それを余すところなく使うための仕組みや技術が並行して上がっているか、ということが問われます。つまり、筋トレを行うことで筋力が増えたら、今度はその筋力をいかに上手に使うか、そのためのトレーニングをするというステップを踏まなければいけないのです。それを抜きにして、単純に筋トレをしたから強くなるはずだと思ってしまうと、大きな失敗につながってしまいます。

目的に応じて、求められる性能は変わる

 さらにいえることは、人間の生活を考えた場合、筋肉の性能やパフォーマンスには、いろいろなタイプが求められます。自動車でも、必ずしもレースに勝てるマシンに仕上げることがすべてではありません。今の時流でいえば、いかに燃費を良くして少ないガソリンでたくさん走る車を作るかということも大切なテーマ。また日常的に使用する場合は、スピードは出るけれども2000㎞しか走れない車より、どれだけ走っても壊れない、丈夫で長もちする車のほうがニーズは高いでしょう。

 スポーツに勝つために洗練された身体能力を身につけたいという人がいれば、健康的な生活が続けられることを重視する人もいます。そういったそれぞれの目的に合わせて、自分の目指す身体づくりをしていかなければなりません。そのためにも、今の自分に足りない要素をしっかりと把握し、それを補っていくことが大切ではないかと思います。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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