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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

急ブレーキをかけるようなトレーニングは、筋肉には逆効果

第47回 筋肉を成長させるメカニズム(2)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋肉を成長させるメカニズムの一つ「タンパク質の代謝系」について詳しく見ていきます。筋肉にちょうどいい刺激を与えると、タンパク質の合成は上がり筋肉は成長しますが、やり方が悪いとタンパク質の合成は下がってしまうそうです。

タンパク質の合成・分解に関する研究の変遷

mTORの状況は、ちょっとした筋肉の使い方で変わる。ちょうどいい刺激ならばタンパク質の合成が上がるが、やり方が悪いと逆に合成が下がってしまう。そういう変化は、ヒトの身体の中でも容易に起こっているらしい。(©Dmitry Kalinovsky-123rf)

 前回は「筋線維の再生系」について解説しました。今回は筋肉を成長させるもう1つのメカニズム、「タンパク質の代謝系」を詳しく見ていきましょう。

 タンパク質の合成や分解に関しては、ここ10年ほどで研究者の考え方がかなり変わってきています。

 そもそも筋肉を増やすためには、タンパク質を合成してたくさん作らなければいけません。筋トレを行うと、タンパク質を合成するための設計図を、大もとの遺伝子(DNA)から写し取って作成するという働きが活性化します。この設計図を「mRNA」(メッセンジャーRNA)といい、この仕組み全体のことを「転写」といいます。10年ほど前までは、この転写が非常に注目されていて、私の研究室でも、筋トレによって転写が活性化する因子が増えることを実験で確かめました。

 ところが、転写の活性化は筋トレ以外のさまざまな刺激でも起こり、また、そのメカニズムが複雑で解明が困難であることから、その後はむしろmRNAからタンパク質が作られる過程(「翻訳」といいます)に注目が集まるようになりました。

 わかりやすく例えると、製品(タンパク質)の設計士から、それを作る工場に注目が移ったということになります。タンパク質を作る工場は、細胞内のリボソームという細胞小器官です。そこにいくら設計図を送っても、工場側がサボっていたらタンパク質は作られません。そこで、タンパク質を合成する工場をフル稼働させる刺激が大切ではないか、ということになったわけです。

 そのための刺激として現在最も重視されているのが、「mTOR」(エムトール)と呼ばれるタンパク質キナーゼの一種。これについては、少し詳しく説明していきましょう。

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