“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋肉のタイプを分類していきます。筋肉の分類法には、(1)「代謝的な特性」により分ける、(2)「組織染色法」により分ける、(3)筋収縮をつかさどる「タンパク質」により分ける、という3つの方法があります。
代謝性の特性による分類
筋線維には大きく分けて速筋線維(FT=fast twich)と遅筋線維(ST=slow twich)とがあります。筋肉に単発の電気刺激を与えたときに、素早く収縮するのがFT、じわっとゆっくり収縮するのがSTです。
ただ、研究の分野では、昔からもう少し細かい分類がされてきました。
最初に行われたのは、筋肉の代謝的な特性によって分ける方法です。筋線維の中にある解糖系のための酵素の量が多いか少ないか(解糖系の活性が高いか低いか)、さらに有酸素系の活性が高いか低いかを調べてみたところ、主に酸素を用いないエネルギー代謝(解糖系)を行うタイプと、酸素を用いるエネルギー代謝(酸化系)を行うタイプとに、きれいに分かれることが判明しました。前者はFG(fast glycolytic)、後者はSO(slow oxidative)と名付けられました。代謝的な特性は力学的な特性にほぼ対応しているので、FT≒FG、ST≒SOということになります。
ところが、どちらにも属さない中間的なタイプも現れました。これはFGとSOの間ということでFOG(fast oxidative-glycolytic)と呼ばれます。このように、代謝系の活性という視点では、筋線維は3種類に分けられることになったわけです。
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