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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋トレ“初心者”ほど記録がどんどん伸びる2つの理由

第44回 トレーニング効果の表れ方(前編)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋力トレーニングの効果がどういう形で表れるかを見ていきます。トレーニングを始めたばかりの初心者は記録がどんどん伸びていきますが、これは筋肉が太くなったからではありません。学習効果と中枢神経の抑制が低減されたことが影響しています。

筋力の増加には2つの要因がある

 筋力トレーニングを行うと、当然ですが筋力が増えていきます。では、なぜ増えるのかというと、これは昔からさまざまな研究が行われていて、1つは神経系の要因、もう1つはサイズの要因であることがわかっています。

 神経系については連載第40回でも解説しましたが、そもそも生物には中枢神経系の抑制という働きがあり、もっている筋肉のポテンシャルを100%使えていません。もう少し正確にいうと、筋肉の中にある運動単位を100%使えていません。

 ところが、トレーニングを行うと、その抑制のレベルがだんだん下がってきます。つまり、より多くの運動単位を使えるような中枢神経系になってくるわけです。それによって発揮される筋力が増えるというのが神経系の要因ということになります。

 一方、サイズの要因はシンプルな話で、筋線維が太くなることに比例して発揮される筋力が増えるということです。

大きな力を出す動作ほど中枢系の抑制は大きくなる

[画像のクリックで拡大表示]
大きな力を出すほうが身体にとっては危険度が高いため、ブレーキがかかりやすくなるのではないかと推測される。(©dolgachov-123rf)

 中枢系の抑制がどのくらい働いているのかは正確にはわかっていません。かつては70%ほどの筋力しか使えていないといわれていましたが、電気刺激を使った最近の実験の報告によると、抑制の度合いはそれほど強くなく、90%ほどの運動単位は使われているのではないかと考えられています。私の研究室でも電気刺激による実験はよく行いますが、90%を割り込むことはあまりありません。

 ただ、こうした実験で問題になるのは、その対象が実験しやすい筋肉に限られてしまいがちという点です。どうしても上腕二頭筋やふくらはぎの筋肉といった小さめの筋肉で、単関節を動かす筋肉が選ばれるので、「90%」という数値も、厳密にはそれらの筋肉に限ったデータということになります。

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