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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

「火事場の馬鹿力」は自らの意志で出せるのか?

第21回 脳が筋肉の活動にブレーキをかけていた

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

ブレーキの強さはどのくらいか?

 では、中枢が運動単位の働きにブレーキをかける強さは、どのくらいなのでしょうか。6割か、7割か、8割か。これについてもさまざまな研究がなされていますが、現在までに定かな結果は出ていません。

 ただ、最近は筋肉に上手に電気刺激を与える手法が幾つも出てきているので、研究はかつてよりも進んできています。それらを総合的に見ると、従来いわれていたよりは力を発揮できている、という主張が増えてきています。7割程度の力しか出せていないと思われていましたが、実際は9割ほど使えているのではないかと。10%ほどは余力が残っているものの、予想されていたほど強いブレーキがかかっているというわけではない、というのが最近の考え方になっています。

 しかし、これもまだ断定はできません。というのも、人にかけられる電気刺激には限界があるからです。私たちの研究室でも100ボルトくらいの短い刺激を与えることはありますが、それ以上やると“電気椅子”になってしまいます。ですから、筋肉の本当の能力はわからない。もしかすると90%出ているというのは過小評価で、筋肉にはもう少しポテンシャルがあるかもしれません。

 いずれにしても、短期的にはシャウト効果などでブレーキの強さをダウンさせることはできます。そして、実は筋トレによってブレーキを徐々に弱くできることがわかってきています。中・長期的なスパンで最大筋力を高めるためには、重い負荷を使って筋トレを繰り返すこと。そうすれば中枢による抑制は弱くなり、筋肉本来の最大筋力に近づいていくことができるのです。

催眠術、興奮剤、シャウト効果、火事場の馬鹿力……
いずれの場合も問題は脳。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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