この連続的な活動電位の間隔があいているのか、間隔が詰まって高周波になっているのかによって筋線維の反応は変わり、それに応じて運動単位が発揮できる筋力も変わってきます。高頻度で刺激すれば大きな力が出ますし、頻度が下がれば力が落ちてくる。落ちながら、ブルブルと痙攣(けいれん)するように力の山が出てくるような状態もあります。30~50ヘルツを超える頻度で活動電位が発揮されると、図にあるように個々の単収縮が融合してなめらかな強縮(完全強縮)となります。
このように活動電位の頻度によって筋線維の力発揮は変わってくるわけですが、1つ1つの運動単位の力そのものは、やはり0か1。活動していないか、フルに力を出しているかの2通りしかありません。
発揮される力はまず運動単位の数で決まる
ここまでの解説でわかるように、筋肉が出せる力は、主にそこに含まれる運動単位をいくつ活動させるか、ということに依存していることになります。
運動単位を使う数を決める指令は大脳の運動野から下りてきますが、大きな力を出したいときは、たくさんの運動単位を活動させるように脳の中の神経細胞もたくさん活動します。それによって運動神経もたくさん活動し、それに相当する運動単位の分だけ筋力が発揮される、ということになります。
一方、あまり大きな力を必要としない動作の場合は、脳がそれを判断し、活動させる運動単位の数を少なく設定します。そういう指令が出ることによって、活動する筋線維も間引かれることになるのです。
仮に、10個の運動単位からなる筋があったとすると、その筋が使いこなせる力のパターンは0と1~10の11通りしかありません。活動の周波数を変えることによって微調整は可能ですが、基本的には11 通りという大まかな調節しかできない。筋力の発揮レベルは、そういう仕組みになっています。複雑そうに思えて、個々の働きはシンプルなのです。そうした運動単位がいくつも絡み合い、さらにさまざまな周波数で動くように制御されているため、結果的になめらかな運動ができるようになっているわけですね。
骨格筋の運動単位の活動は、「0か1か」という2通りしかない。
(構成:本島燈家)
東京大学教授


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