その歩き方で大丈夫? 脛・踵が荒れる原因とは
【アトピー発症機序理論2】
山本綾子
股関節を支点に、踵から入り地面を蹴る
まず、歩くときの基本は、「股関節を支点」にして足を動かす、ということです。
実際に街中で、老若男女、いろんな人の歩き方を見ていると、「膝を支点」にして、膝から上の太ももをほとんど動かさず、膝を曲げたまま動かしている人がとても多いと感じます。膝を曲げたままの状態で最もわかりやすいのが、ハイヒールの女性。横から見ると膝部分が「く」の字のままで、まるで竹馬に乗っているかのような歩き方です。また、ガニ股の男性も、いつも膝を曲げたままになっています。
膝の裏には、血管もリンパ管も通りますから、膝を曲げたままでは、血流もリンパ流も悪くなります。むくみやすくもなりますね。
そして、もう一つ大切なことは、「踵(かかと)から入り、地面を蹴る」ということです。靴底を擦る音がする人は、つま先から着地していることが多いです。つま先からすーっと靴を擦らせていると音がしますし、前方の靴底の減りが早くなります。足音も、「すーっ」となる音で独特なものになり、「近づくと特徴があり、すぐ分かる」と周りの人に言われるかもしれません。
足部を構成する骨をイメージしてみましょう。いくつもの骨がありますが、最も大きいものは踵の骨ですよね? ということは、体重を支えるためには、つま先ではなく、踵から入らないと不安定になります。剣道経験者で「すり足」の癖がある人や、バレリーナで「つま先」から入る癖がある人もいますが、スポーツでの動作と、歩く動作では、足の使い方が違うのです。
そして踵から入ったあとは、「地面を蹴る」ことが非常に大切です。「地面を蹴る」ことにより、地面からの衝撃が脳に直接届かないよう、衝撃を地面に逃してきます(両足でジャンプして足裏全体で着地すると、ずどーんと衝撃がきますよね?)。この「地面を蹴る」という動作こそが「土踏まず」を作り、扁平足にならないようにしています。扁平足は、身体の使い方の誤りによっておこるのです。
なお近年、美しい歩き方の薦めとして、「踵から着地するのは実は誤りで、足裏全体で着地するのが正しい」という指摘もあります。前述の説明通り、足裏全体で着地すると、脳にまで衝撃が届いてしまうので、正確な表現ではないと考えられます。これは正確には、小指側をまず最初に着地させ、順に5、4、3、2、1番の指を軽く曲げる気持ちで力を入れてゆき、最後に親指から重心が抜けるように蹴り出します。このことにより、足の指がしっかりと動き、足指のしもやけなども防げます(足指にしもやけができる人は、足指が動いていません)。この歩き方により、足裏全体をしっかりと地面に接地させ、地面からの衝撃をできるだけ広い面積で分散させているのです。
脛のカサカサの原因は?
踵からきちんと入るためには、「足の甲を引き寄せる」必要があります。このとき、足の甲を引き寄せるために働く筋肉は「前脛骨筋(ぜんけいこつきん/右図)」と呼ばれていますが、この筋肉こそが「脛がカサカサする」と皆さんがおっしゃる部位です。脛の乾燥は、“脛部分の筋肉が正しく動いていない=足の甲を引き寄せられていない”ためだったのです。
実際、外来を訪れた脛がカサカサする患者さんには歩き方の指導をしますが、正しく歩けるようになるだけで、面白いほど脛の乾燥がなくなる人がほとんどです。
さて、正しい歩き方に納得していただけたら、次に「しなやかな筋肉は全身血流アップのカギである」ということを解説したいと思います。
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