皮膚科専門医 山本綾子の「解決!オトナの皮膚病・肌トラブル」
冬のカサカサ肌・かゆみ肌は悪い姿勢が原因だった!?
【アトピー発症機序理論1】
山本綾子
気候や暖房器具などの影響で乾燥がピークに達する冬は、肌のトラブルを訴える人が増える。さらに花粉症のシーズンが始まると、肌がかゆい……と皮膚科を訪れる人が増える一方で、「体質だし、乾燥肌だから仕方ない」と市販の軟膏や保湿クリームを塗布し、やり過ごす人も多い。
しかしこの乾燥、肌のトラブルが、「体質」ではなく「姿勢」にあるとしたら? 重いアトピー性皮膚炎をはじめ、さまざまな肌トラブルを抱える患者を診る中で、新たに「アトピー発症機序理論」を提唱するようになったというナビタスクリニック川崎の皮膚科専門医、山本綾子先生(日本皮膚科学会専門医)が、さまざまな皮膚病・肌トラブルについて解説する連載。
1回目は、どんな人が肌トラブルに悩まされているのか、その原因は?
40代でも粉を吹くような肌は、正常ではない

冬は乾燥対策の入浴剤や保湿クリームがよく売れますが、こうした肌のトラブルが起きるのは、主に「体質」や「加齢」によるものと思っている人が多いのではないでしょうか?
クリニックで受診される患者さんの中には、20代でも白く粉を吹くようなカサカサ肌になっている人もいます。70代、80代以上の高齢の方ならそういうこともあり得ますが、20代はもちろんのこと、30代、40代でもまだまだ肌の水分量も油分量も十分な年代。ご自身の体を見ていただきたいのですが、カサカサ肌、かゆみ肌になっているのは、背中の肩甲骨や腰まわり、あるいはひざ下の肌ではないでしょうか? その部位は粉を吹いたり、黒ずんだりしていないでしょうか? これは当然、肌の状態として、正常ではありません。
いきなりですが、ここでまず、以下の項目をチェックしてみてください。
1.深呼吸をすると、前胸部や肋骨のあたりが痛い
2. 脂肪によるものではなく、腹部に横線が入っている(細い横線)
3. 両足で自然に立った際、足指の裏と地面との間に紙が入る。あるいは足の小指や親指が上を向く
4. 土踏まずのへこみがあまりない
5. ふくらはぎが体の割に太く、硬い
いずれも体の使い方、筋肉の使い方が正しくないと起きる現象です。そしてこれらは肌トラブルの原因となり、チェック項目が1つでも当てはまる人は、肌のトラブルがあることが多いと考えられます。
カサカサ肌やかゆみ肌になっている人の多くは、市販のものでも皮膚科で処方されるものでも、保湿剤を使えばいったんはかゆみやカサカサが治まるので、「体質だから」とあきらめているのではないかと思います。
ダンサーやボクサーも冷え症になる
ところで、なぜカサカサ肌は冬に目立つのでしょうか。気候により乾燥しているからという理由もありますが、どちらかというと寒くなることで血流が悪くなり、姿勢が悪くなる──ある意味、寒さに負けるからなのです。
では日ごろから運動していれば血流が良くなって冷え症にならず、肌トラブルにも悩まされないのか? というと、そうでもありません。
先日は職業がダンサーという30代に入ったばかりの男性が受診されましたが、体を動かす職業にもかかわらず、冷え症でした。ボクシングをしている10代の方は、腹筋が6つに割れているのに、慢性の湿疹に悩まされていました。ある20代の女性は、ブーツを履いて脚を温かくしているにもかかわらず、脛(すね)がカサカサしていました。
20代の女性のケースで言えば、歩くときの足の出し方に問題があります。ひざから下しか使わず腰を使ってちゃんと歩いていないと、血流の悪い部位ができてしまう。筋肉は、表面だけ使っても、内臓を温めることができません。また、普段の生活で正しく身体を使わなければ、筋肉も使えません。それが血流をさらに悪くし、肌トラブルにつながっていくわけです。
