日経グッデイ

医療問題なぜなにゼミナール

第14回 玉石混交のネット医療情報…悩んだらマインズ(Minds)で調べてみよう

一般向けのやさしい診療ガイドランや用語解説も掲載

 山口育子=NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長

誰もがいつかはお世話になる「医療」。ですが、自分や家族が病気になるまで、医療については特に関心がないという人も多いのではないでしょうか。医師との付き合い方や医療制度の動向まで、いざという時にあわてず、安心して治療を受けるために必要な知識をNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんが伝授します。

 皆さんは、診療ガイドラインをご存じですか? 診療ガイドラインとは、治療方法を選択するときに適切な判断ができるよう、患者と医療者を支援する目的で作成された文書のことです。科学的な根拠(エビデンス)を精査した上で、色々な立場の人の合意に基づいて、推奨(おすすめ)が示されています。診療ガイドラインの情報を医療者と共有することで、患者自身が主体的に最善の治療法を選ぶ手掛かりになります。

様々な診療ガイドラインを調べられる「Minds(マインズ)」

 診療ガイドラインは、病気の治療マニュアルではありませんし、絶対に守らなければならないルールでもありません。診療ガイドラインで推奨されている治療法でも、患者全員にあてはまるとは言えませんし、逆に、診療ガイドラインに載っていない治療法は間違いだとも言えません。最終的にどの治療を選択するかは、あくまで個別に考えていく必要があります。

 日本では1990年から、診療ガイドラインを整備する研究事業が国を挙げて本格化しました。中立的な立場でガイドラインの整備や情報提供が行えるように、日本医療機能評価機構にEBM医療情報サービスセンター(現:EBM医療情報部)が設置され、厚生労働省の科学研究費による研究事業として運営が始まりました。

 EBMとはevidence-based medicineの頭文字で、根拠に基づく医療と訳されています。まさしく科学的根拠に基づき専門家が作成したガイドラインや文献を情報提供するための事業と言えます。2004年には医療情報サービス「Minds(マインズ:Medical Information Network Distribution Service)」の一般公開が始まり、2011年度からは研究事業から厚生労働省の委託事業へと変更して継続されています。

エビデンスのしっかりした医療情報をわかりやすく解説

 Minds(http://minds.jcqhc.or.jp/n/)にどのような情報があるのか、具体的にご紹介します。

一般向けガイドライン解説

 学会や研究会などが公表している、患者など一般の人向けのガイドラインが掲載されています。「がん」「脳・神経」「心臓と血管」「呼吸器」「消化器」といった18のカテゴリー別に整理されているほか、50音順で検索することも可能です。

図1◎ Mindsの一般向け「ガイドライン解説」において、「心臓と血管」で検索した結果
[画像のクリックで拡大表示]

 ガイドライン解説は、分かりやすい言葉で、理解の助けになるような図や絵もふんだんに使われています。病気が判明して、治療方法について説明を受ける前に読んでおくと、ドクターの説明が理解しやすいのではないかと思います。説明を受けた後に読めば、理解をより深められるでしょう。

 なお、ガイドライン解説には、下記の3種類があります(図1の表では左から3列目に種別が表示されています)。目的に応じて、使い分けるといいでしょう。

(1)学会版ガイドライン解説

 病気や治療法について知りたい時の手助けになるように、医学的な情報や専門医の助言をまとめています。学会などが作成した一般向け診療ガイドラインの中から、診療ガイドライン選定部会が評価選定したものを掲載しています。

(2)Minds版ガイドライン解説

 診療ガイドラインは患者さんにとって大事な診療情報が多く含まれていますが、医療提供者向けにつくられた診療ガイドラインには、専門的で難しい内容も含まれています。Minds版ガイドライン解説では、診療ガイドラインの中でも特にポイントとなる部分の医学用語を中心に、一般の方向けにわかりやすく解説しています。

 また、一般向けのガイドラインが作成されていない病気でも、医療者向けガイドラインを読み解けるように解説されているものもあります。診療ガイドラインの作成に参加した専門医からの「患者に知っておいてほしいコメント」も掲載されており、内容を理解する上での手助けになります。

(3)Minds版やさしい解説

 病気についての一般的な情報(臓器のしくみや働き、検査の方法、治療方法、日常生活の注意点など)が解説されています。一般向けガイドラインが作成されていなくても紹介されている病気がありますので、調べたい病気の情報があるかどうか確かめてみましょう。

図2◎ 「Minds やさしい解説」の画面例
[画像のクリックで拡大表示]

医療提供者向けサービス

(1)診療ガイドライン

 学会等が作成した診療ガイドラインの中から、EBM医療情報部で「質と信頼性が高い」と評価したものが紹介されています。

(2)コクラン・レビュー・アブストラクト

 科学的根拠に基づく情報として、世界的に信頼度の高い医学データベースの一つである「コクラン・ライブラリ」の論文の要約を、日本語に翻訳したものが掲載されています。

(3)CPGレビュー

 たとえば、米国で標準的とされている治療方法でも、日本では「保険で認められていないから受けられない」という場合があります。このように、さまざまな理由によって、診療ガイドラインも国によって異なるのです。そこで、このコーナーでは、国内外の診療ガイドラインを比較したり、それぞれの特徴などを紹介したりしています。ちなみにCPGは、Clinical Practice Guidelines(診療ガイドライン)の頭文字です。

(4)Mindsアブストラクト

 ガイドラインは平均すると約5年で改訂されることが多いようです。それは、常に新たな医学研究が進められ、より科学的根拠に基づく治療方法を提示していく必要があるからです。ガイドラインが公表された後も、新しい医学論文が発表されます。そこで、ガイドライン作成後にどのような医学論文が発表されているか、その要約が日本語で読めます(現在、新規作成は中止。掲載されているMindsアブストラクトは、2005年6月~2011年1月までに作成されたもの)。

(5)トピックス

 各分野のガイドラインを作成している第一人者の専門家が、「今後まさしくガイドラインの目玉になっていくであろう項目」を紹介しています。その分野で注目されている情報や最新の医学論文情報が提供されています(現在、新規作成は中止)。

信頼できる情報にアクセスできる能力をつけよう

 EBM医療情報部では、「診療ガイドラインの情報はMindsに聞けば分かる」と広く認識してもらうことを目指し、日本中の診療ガイドラインのデータベース化を進めています。まず、書籍やウェブサイト、報告書、論文などの中から、診療ガイドラインと判断できるものを絞り込んでいき、評価する作業が進められています。

 Mindsでは、一般への認知度がまだまだ十分ではないことから、「信頼性の高い情報を提供し、主体的に自分の治療方法を選択するために利用してほしい」と広く呼びかけることに力を入れたいそうです。皆さんも一度、関心のある病気のガイドラインにアクセスしてみてはいかがでしょうか。医療者の方は、「このようなサイトでガイドラインを読むことができるから、次の説明の日までにぜひ目を通しておいてほしい」と患者に積極的に情報提供すれば、患者との情報共有に役立つのではないでしょうか。

 COMLの電話相談では、不確かなインターネット情報を鵜呑みにしたり、情報を正しく収集できずに疑心暗鬼に陥ったりしている相談が目立ちます。ネット上に情報が溢れている時代だからこそ、Mindsのような信頼できる医学情報をうまく活用して、適切な情報にアクセスする能力を養っていく必要があるのだと思います。

【関連連載】

COML患者相談室

COML患者塾

山口育子(やまぐち いくこ)
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長
山口育子(やまぐち いくこ) 大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療の必要性を痛感していた1991年11月、COMLと出会う。「私たち一人ひとりが『いのちの主人公』『からだの責任者』。そんな自覚を持った『賢い患者になりましょう』をキャッチフレーズとした活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとして参加。創設者の辻本好子氏の死去により、理事長に就任。COMLでは、電話相談や各種セミナーなどを積極的に実施。このほか、厚生労働省をはじめとした各種検討会の委員としても幅広く活動している。
日経グッデイ春割キャンペーン