誰もがいつかはお世話になる「医療」。ですが、自分や家族が病気になるまで、医療については特に関心がないという人も多いのではないでしょうか。医師との付き合い方や医療制度の動向まで、いざという時にあわてず、安心して治療を受けるために必要な知識をNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんが伝授します。
セカンドオピニオンという言葉をご存じでしょうか。直訳すると「2番目の意見」、つまり、自分の病状や治療方針などについて今かかっているドクターから説明を受けた後に、「もう一人別の専門家の意見を聞いてみたい」というときに求めるのがセカンドオピニオンです。大きな病気が見つかったり、手術が必要と言われたりすると、患者としては、「別の専門家ならどんな判断をするのだろう」「ほかの治療方法があるのではないか」という気持ちになるのは自然だと思います。
セカンドオピニオンが広がった背景
セカンドオピニオンという言葉は、1990年代ころから耳にするようになりました。ですが、それ以前は行われていなかったというと、そうではありません。例えば、多くの女性が健康な子宮や卵巣を摘出されたという富士見産婦人科病院事件(1980年)では、「本当に手術が必要なのだろうか」と疑問を持ち、別の婦人科医にかかった女性もいました。「病気ではない」「手術の必要はない」とのセカンドオピニオンを得た彼女らは、子宮や卵巣を摘出せずに済んだのです。
90年代になり、セカンドオピニオンという言葉が知られるようになってきたことで、セカンドオピニオンを聞いてみたい患者の背中を押した面はあると思います。実際、セカンドオピニオンを希望する患者が増えました。ところがその結果、特に大きな病院では、外来診療に支障を来すようになってしまいました。
なぜなら、セカンドオピニオンを求める人には質問したいことがたくさんあり、そのすべてに答えるのはたいへんな時間を要するからです。例えば1人に30分かかるとして、セカンドオピニオンを求める患者が外来診療に1日3人いれば、1時間半もかかってしまいます。そうすると、他の患者の待ち時間がいつも以上に長くなりますし、ドクターも疲れてしまいます。
「セカンドオピニオン外来」は保険が利かない

そこで、2002年の広告規制の緩和(セカンドオピニオン外来の実施が広告可能になった)を受けて、東京都内の3カ所の大学病院で「セカンドオピニオン外来」が始まりました。一般外来とセカンドオピニオン外来を分けた上で、セカンドオピニオン外来は自由診療(保険が利かないため全額自己負担)にしたのです。
この方法が広まり、現在では全国の主だった病院で、セカンドオピニオン外来が設けられています。外来の費用は病院が自由に決められるため、中には30分で3万円以上かかる例もあります。
多くのセカンドオピニオン外来には、共通のルールがあります。それは、患者が持参したセカンドオピニオンのための紹介状と検査データを見て、専門医が意見を述べる(意見を文書化してくれる病院もあります)だけで、改めて診察や検査は行わないということです。今かかっているドクターへの不満や、亡くなった家族の受けた治療内容への意見も受け付けられません。
ですので、診察や診断を求めたり、転院して治療を受けたいと希望したりする場合は、セカンドオピニオン外来ではなく、一般外来を受診することになります。セカンドオピニオンを求めたいと思ったときは、その目的を考えて、セカンドオピニオン外来が適しているかどうかの判断が必要です。
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