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医療問題なぜなにゼミナール

第15回 医療で活躍できるボランティアを養成!

患者と医者との懸け橋となる活動で求められること

 山口育子=NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長

誰もがいつかはお世話になる「医療」。ですが、自分や家族が病気になるまで、医療については特に関心がないという人も多いのではないでしょうか。医師との付き合い方や医療制度の動向まで、いざという時にあわてず、安心して治療を受けるために必要な知識をNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんが伝授します。

自身や家族が医療のお世話になったとき、「ボランティアで貢献したい」と思ったことはありませんか。(©melpomen-123rf)

 COMLでは2009年から、「医療で活躍するボランティア養成講座」を開講しています。「医療を単なる個人的な問題で済ませるのではなく、社会の問題であることをも視野に入れた患者が増えてほしい」との思いからです。

 背景には人口の高齢化と、それに伴う慢性の病気の増加があります。中でも、話題に上ることの多いがんは、2人に1人が生涯のうちのいずれかの時点でなるといわれるほどありふれた病気になっています。がんと共存しながら、生活の中でいかに上手に治療を続けていくかが問われています。

 そうなると当然、患者と医療者との関係も変わります。かぜなどの急性の病気が主流だった時代は、短期間のお付き合いで済んでいた(その間は医療者が主導権を握っていた)のですが、生活習慣病のような慢性の病気では、長期間にわたって患者と医療者が“協働”することが求められます。

 同時に、患者の権利意識やコスト意識も高まってきており、受け身で(医師に)お任せの姿勢から抜け出して、自立して主体的に医療を受ける必要性が出てきました。いつもCOMLがお伝えしているように、患者自身が“賢い患者”へと成熟し、さらに医療の現状や課題を理解した上で冷静に医療と向き合うことが必要とされているのです。

「一歩踏み込んだ」関わりを目指す

 「医療で活躍するボランティア養成講座」では、医療で活躍できる活動の種類やそれぞれの内容を紹介します。ボランティアに求められる倫理や心得、さらには賢い患者の姿勢や病院選びの方法なども伝えています。医療の変遷、医療専門職の種類と役割、医療制度や医療費の基礎知識、医療にまつわる課題…などを含めた、全5回(1回3時間)のプログラムです(表1)。

表1◎ 「医療で活躍するボランティア養成講座」の内容
講座名講座内容
講座1医療現場で活躍を期待されるボランティアとは・講座の目的
・COMLの基本姿勢と活動紹介
・ボランティアとしての心得
・どんなボランティアとして活躍できるのか(病院ボランティア、模擬患者、電話相談スタッフ、検討会や審議会の委員など)
講座2医療の基本・医療の変遷(制度、できごと、患者の権利の発展)
・医療機関や専門職の種類と役割
・医療現場の課題
・医療費の基本
講座3医療相談の実際・COMLの相談対応の基本姿勢と実際
・相談から見える患者の意識の変遷
・相談対応に必要な情報と姿勢
・相談内容の紹介とディスカッション
講座4医療を知るI・病院選びと賢い患者の心構え
・医療費の知識
・セカンドオピニオン
講座5医療を知るII・医療にまつわる社会的な知識(納得できないときの解決方法、個人情報保護法、成年後見制度、高額療養費制度、医療費控除)
・薬にまつわる情報(治験、ジェネリック、医薬分業、副作用被害など)
開催日時や場所、費用に関しては、COMLのウェブサイトでご確認ください。

 このプログラムは企画した当時(2008年)、COMLの活動約20年の集大成という想いで作成した、かなり密度の濃いプログラムだと自負しています。受講した方が、今まで以上に医療に関心を持ち、ボランティアとして一歩踏み込んだかかわり方をしてくださることを目指しています。これまでに計7期(1期内には複数のコースあり)の講座を開催し、受講者はのべ400人に上ります。修了後に病院ボランティアや患者情報室のスタッフになった人、模擬患者(*)や電話相談スタッフとして活躍している人もたくさんいらっしゃいます。

*模擬患者とは、医学・薬学・看護学教育の一環として、学生や研修医がコミュニケーショントレーニングを行う際の相手となる「患者さん役」のこと。

 夏期コースは2016年8月8日からの1週間です。また、秋以降には日曜コースを2つ準備していて、コースをまたがってご都合のいい日に受講することも可能です。「受講してみたい!」と思われた方は、ぜひCOMLのウェブサイトにアクセスしてみてください。

 また、現在COMLでは、行政や医療機関、倫理審査委員会などの一般の外部委員の需要の高まりから、上記講座を基礎コースとし、更なるアドバンスコースとして「委員養成講座」を企画するため、現在トライアル「倫理審査委員養成講座」を行っています。そして、できるだけ早い時期に委員養成・バンク化構想へと発展させたいと思っています。そのことも追って紹介するつもりです。

幅広い分野で活躍を期待

 では、一般の方が参加できる医療に関するボランティアには、どのようなものがあるのでしょうか。

 “医療現場で活躍するボランティア”として一般的でイメージしやすいのは、“病院ボランティア”でしょう。外来受診する患者のサポート役として案内や車椅子の介助、入院患者のベッド周りの整理整頓や食事の配膳、散歩のサポート、絵本の読み聞かせ、季節ごとの行事やコンサートの企画運営などが、病院ボランティアの主な役割です。もちろん、個々の病院によって活動の種類や内容は異なります。共通して言えるのは、ボランティアは空いた時間を利用して、自分の得意分野や趣味を生かす活動ということです。特別な知識や訓練は必要とされません。

 最近、医療にまつわるボランティア活動は、病院ボランティア以外に、(1)患者の自立支援、(2)医療の改善、(3)医療への提案――などに広がりつつあります。次回は、それぞれについて、具体的にどのような活動があるのかをお話ししたいと思います。

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COML患者相談室

COML患者塾

山口育子(やまぐち いくこ)
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長
山口育子(やまぐち いくこ) 大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療の必要性を痛感していた1991年11月、COMLと出会う。「私たち一人ひとりが『いのちの主人公』『からだの責任者』。そんな自覚を持った『賢い患者になりましょう』をキャッチフレーズとした活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとして参加。創設者の辻本好子氏の死去により、理事長に就任。COMLでは、電話相談や各種セミナーなどを積極的に実施。このほか、厚生労働省をはじめとした各種検討会の委員としても幅広く活動している。
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