誰もがいつかはお世話になる「医療」。ですが、自分や家族が病気になるまで、医療については特に関心がないという人も多いのではないでしょうか。医師との付き合い方や医療制度の動向まで、いざという時にあわてず、安心して治療を受けるために必要な知識をNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長の山口育子さんが伝授します。
体調がすぐれないとき、いつも診てもらう医師のことを「かかりつけ医」といいます。同じように、どの医療機関で発行された処方せんでも持っていく薬局を決めている場合、その薬局を「かかりつけ薬局」と呼んでいます。

医薬分業(医師は診断や治療を行い、薬の管理や情報提供は薬剤師が行う役割分担)が普及し、医療機関で診察を受けたら処方せんを発行してもらい、薬は外の薬局で調剤してもらうことが一般的になりました。いまでも、医療機関の近くの薬局(いわゆる門前薬局)でなければならないと誤解している人がいますが、そうではありません。どの薬局で薬を出してもらうかは、患者が選べるのです。
それに、処方せんは発行から4日間の有効期間があるので、何も発行されたその日のうちに薬局を訪ねる必要はないのです。例えば、職場の近くにかかりつけ薬局があるとすれば、通勤途中に寄って処方せんを提出し、お昼休みに受け取りに行くことも可能です。そうして長い待ち時間を解消することもできるわけです。
複数の処方せんを「かかりつけ薬局」にまとめるメリット
いま、患者が「かかりつけ薬局」を持つことが注目され始めています。複数の医療機関から発行される処方せんを1カ所にまとめることにより、医薬分業の本来の目的が果たせるからです(下表)。
・使用したい医薬品が手元に無くても、患者に必要な医薬品を医師・歯科医師が自由に処方できること。
・処方せんを患者に交付することにより、患者自身が服用している薬について知ることができること。
・「かかりつけ薬局」において薬歴管理を行うことにより、複数診療科受診による重複投薬、相互作用の有無の確認などができ、 薬物療法の有効性・安全性が向上すること。
・病院薬剤師の外来調剤業務が軽減することにより、本来病院薬剤師が行うべき入院患者に対する病棟活動が可能となること。
・薬の効果、副作用、用法などについて薬剤師が、処方した医師・歯科医師と連携して、患者に説明(服薬指導)することにより、 患者の薬に対する理解が深まり、調剤された薬を用法どおり服用することが期待でき、薬物療法の有効性、安全性が向上すること。
(出典:平成23年版 厚生労働白書)
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