最近、大病院を受診する際に、「紹介状を持参してください」と言われることが増えました。COMLの電話相談でも、「紹介状がないと、一見(いちげん)の患者は診てもらえないのですか?」というご質問をよくいただきます。
「絶対診ません」という医療機関はさすがにないと思いますが、病状や必要な治療内容によって医療機関を選ぶという病院の機能分化が進むなか、紹介状を持参する必要性は高まる傾向にあります。たとえ軽い病気でも大病院で診てもらいたい、と望む方もいますが、高度・先進的な急性期医療を担う病院には、そのような医療が必要と専門家が判断した患者が受診するという仕組みなのです。
紹介状を持参しない患者が多ければ大病院の収入減に
このような仕組みが広がりつつある背景には、急速な高齢化などに伴い患者数が増える一方で、財源的な問題や病床数の規制もあり大きな病院は増やしにくく、加えて、医師とはじめとする医療従事者数も十分とは言い切れないという現実があります。そうした中で、軽い病気の場合を含め多くの方が大病院に集中したら、病院が機能不全に陥ってしまいかねません。

また、病院側が、地域の診療所などで書いてもらった紹介状の持参を奨励する背景には、診療報酬による経済誘導も関係しています。大病院に初診でかかる際に紹介状を持参する患者を増やすよう、診療報酬上、“紹介率”が関係する項目が設定されているのです。
紹介率とは、初診の患者が紹介状を持参している割合のことです。例えば、2014年の診療報酬改定で、特定機能病院(大学病院本院や高度・先進医療を担う特定の医療機関)や500床以上の地域医療支援病院では、紹介率が50%未満だと、初診料や外来診療料(200床以上の病院に再診する場合の基本料金)に関し、安い点数しか請求できないようになりました。地域医療支援病院でない500床以上の病院では、紹介率が40%未満だと同様の低い点数になります。診療報酬は1点=10円と決められており、紹介率の低い病院は収入が減ってしまうことになります。
そもそも、地域医療支援病院とは地域の基幹病院であって、認可される条件に紹介率や逆紹介率(症状が安定した患者を地域病院や診療所に逆に紹介して戻した割合)が大きくかかわっています。地域医療支援病院として認められれば、入院基本料に加算が付けられる(病院が得る診療報酬が増える)ため、これもある種の誘導と言えるでしょう。このようにして、大病院には、紹介状を持参する初診患者を増やそうというインセンティブ(誘導)が働いています。
