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医療問題なぜなにゼミナール

第7回 「臨床研究」の新指針に期待すること

ディオバン問題への反省を生かすには

 山口育子=NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長

まずは行政指導や改善命令で是正を促す

 そして、予期せぬ有害事象が生じたときは、速やかに倫理審査委員会に報告して、研究を継続するかどうかを検討すること。研究機関は不適正な問題が起きていないか情報の収集をすることに努めて、そのための窓口を設けること。問題が生じれば、きちんと調査し、迅速な対応をすることを求めることにもなりました。

 ディオバン事件では、厚生労働省にも調査権限がなかったため、ヒアリングを行うにしても、あくまで任意で求めることしかできませんでした。そのため、一定の法規制をかけるにあたっては、行政当局は関係者に対して調査し、必要な措置を講じる権限を確保すべきという内容も盛り込まれました。ただ、仮に義務違反が起きたとしても、すぐに直罰を下すのではなく、まずは行政指導や改善命令によって是正を促し、それでも改善が図られなければペナルティを適用するということになりました。

倫理審査委員会に多くの人がかかわってほしい

 ディオバン事件では、製薬企業の社員が研究に直接介入していたことが大きな問題の一つでした。その一方で、日本で研究を推進するためには、産学連携は不可欠です。そのため、製薬・医療機器の業界は行動指針を策定し、労務提供のきちんとした線引きを行うこととし、まずは業界内の自律的な改善を見定める方向になりました。

 そのためにも、利益相反を適切に管理し、公表する重要性が謳われました。利益相反とは、利害関係が想定されるかかわりのある状態のことです。「利害関係がある」と聞くと、裏取り引きや利益追従といったマイナスイメージが伴いがちです。しかし、利益相反はあって当然で、むしろ積極的に公表して線引きを明確にすることのほうが大切だということなのです。

 ほかにも、臨床研究に欠かせないとされる「生物統計家」をはじめとする専門家の養成や、一般の立場で倫理審査委員を務める人の学びの場が必要ということも、報告書では指摘されました。私自身もいくつかの倫理審査委員を務めているなかで、最低限の知識や審査の視点・ポイントを学ぶ必要性は痛感しています。

 今後、ますます非専門家の外部委員として一般の立場の人の参加が必要とされてきます。欧州の国の中には、倫理審査委員会に委員として参加することが、社会貢献の一つとしてステータスになっていることもあるそうです。日本でも多くの方がこのような問題にも関心を持ち、進んで倫理審査委員会に参加するような時代が来てほしいと思っています。

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山口育子(やまぐち いくこ)
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長
山口育子(やまぐち いくこ) 大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療の必要性を痛感していた1991年11月、COMLと出会う。「私たち一人ひとりが『いのちの主人公』『からだの責任者』。そんな自覚を持った『賢い患者になりましょう』をキャッチフレーズとした活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとして参加。創設者の辻本好子氏の死去により、理事長に就任。COMLでは、電話相談や各種セミナーなどを積極的に実施。このほか、厚生労働省をはじめとした各種検討会の委員としても幅広く活動している。

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