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医療問題なぜなにゼミナール

第5回 医療・介護の「2025年問題」をご存知ですか?

「3人に1人」が65歳以上、「5人に1人」が75歳以上になる時代が訪れる

 山口育子=NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長

 構想を策定するためには、現状を知る必要があります。そのため、1年前から病床機能報告制度が始まりました。病床機能報告制度とは、一般病棟を持つ病院や有床診療所(20床未満のベッドを持つ診療所)が、病棟ごとにどのような機能を持っているかを自主的に都道府県に報告する制度です。機能は次のような4種類に分かれています。

表2◎ 病床機能報告制度における4種類の医療機能
医療機能提供される医療の概要
急性期

●病気が見つかってから、積極的・専門的な治療を集中的に提供する機能です。そのため、入院期間は比較的短くなります。

<例>
*乳がんが見つかり、手術や放射線・抗がん剤治療を受ける。
*脳梗塞を起こして救急車で運ばれ、入院して治療を受ける。

高度急性期

●上記の急性期の中でも、さらに濃厚で集中的な治療が必要な医療を提供する機能です。

<例>
*大きな交通事故に遭い、意識がなく、命に危険が及んでいる状態。
*急性心筋梗塞で一刻を争う高度で濃厚な治療が必要な状態。

回復期

●急性期での治療が一段落したものの、まだ不安定な状態なので、自宅や介護施設への退院を目指して入院治療を提供する機能です。

<例>
*心筋梗塞を起こして急性期病院で治療を受けたものの、在宅復帰するには入院治療が必要な状態。

●脳卒中や心臓の病気、骨折などで急性期病院に入院後、治療が一段落した患者に、集中的なリハビリテーションを提供する機能です。他の医療機能よりもリハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が充実しています。

<例>
*クモ膜下出血を起こして急性期病院で入院治療を受けた後、2カ月以内にリハビリテーションの必要性があると判断された場合。

慢性期

●積極的・専門的な治療の必要はないが入院を必要とする患者に対して、比較的長期に(長くても半年程度)入院医療を提供する機能です。

<例>
*複数の持病を持ち、寝たきりで、身の回りのことは自力でできない。

●長期にわたって療養が必要な重度の障害を持つ方(重度の意識障害も含む)や筋ジストロフィー患者、または難病患者の入院を提供する機能です。

<例>
*難病で長期の入院生活が必要。

 この制度によって、現在、どのような機能を持った医療機関が存在するのかをまずは都道府県が把握し、今後考えられる人口推移や人口構成の変化などを考慮しながら、それぞれの機能ごとに10年後に必要な量を推計しようとしているのです。ただ、これは行政が独自に計画するわけではありません。医療や介護にかかわる専門職や住民の声を聞きながら、地域全体で構想を描いていこうとしています。

 これは急に決まったことではなく、1985年から、各都道府県で医療計画の作成が導入されたことに端を発しています。それ以来、5年ごとに計画は見直され、地域ごとに必要な病床数を管理し、きちんと医療連携や医療安全対策が講じられているかを評価してきました。これによって、既に医療機能の分化が進められてきたのです。つまり、一つの医療機関がすべての役割を担うのは不可能なので、さまざまな機能を担う医療機関がしっかり連携して“地域完結型医療”を進めていこうというわけです。

「ずっと同じ病院で診てほしいのに追い出される」という訴えの背景

 私は、厚生労働省の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会の構成員を務めているのですが、住民が地域医療構想策定に参加するには、まず「病床機能の分化」「連携」「地域包括ケア」などについて理解できる丁寧な説明が欠かせないと考えています。

 その上で、どのような状態のときに、どのような医療機能を持った医療機関を選ぶのか具体的な解説が必要です。そして、在宅医療の充実も含め、地域ごとの現状、5年後、10年後の人口推移や年齢構成の予測、それに合わせた医療機関の需要の変化を明確に提示することが大切だと思っています。住民が地域医療構想にかかわるためには、まずは同じ土俵で話し合いができるだけの情報が不可欠だからです。

 にもかかわらず、これまでは医療計画への「住民参加」がそれほど進んでいると言えず、医療機関が機能によって役割分担している(医療機能の分化)ことが広く理解されてはきませんでした。そのため、私たちCOMLの電話相談にも「入院してまだ治りきっていないのに転院を勧められた」「ずっと同じ病院で診てほしいのに追い出される」という訴えが今なお届いているのだと思います。

 しかし、この病床機能は住民にもわかりやすく公開されることになっています。公開が始まれば、私たちも自分の住む地域の医療機関の機能について理解する機会が訪れるのです。

医療法に書き込まれた「国民の責務」

 実はあまり知られていませんが、2014年の医療法の改正によって、医療法第6条の2の3項に「国民の責務」が盛り込まれました。医療法で“国民”が主語になった初めての条文です。

【医療法 第6条の2の3】
 「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない」

 一見すると、国民に多大な責任を負わせているように見える条文かもしれません。しかし私は、これらの責務を果たすために必要な情報は何かを考える時代がようやく到来したのだと思っています。この条文に記載されている責務を果たすためには、情報が欠かせないからです。どのような情報をどこに求めていくのか、これから10年かけて私たち患者・住民側も学んでいく必要性が問われていると思っています。

【関連連載】
COML患者相談室
COML患者塾

山口育子(やまぐち いくこ)
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長
山口育子(やまぐち いくこ) 大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的医療の必要性を痛感していた1991年11月、COMLと出会う。「私たち一人ひとりが『いのちの主人公』『からだの責任者』。そんな自覚を持った『賢い患者になりましょう』をキャッチフレーズとした活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとして参加。創設者の辻本好子氏の死去により、理事長に就任。COMLでは、電話相談や各種セミナーなどを積極的に実施。このほか、厚生労働省をはじめとした各種検討会の委員としても幅広く活動している。

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