今から10年後、日本では3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上というかつて私たちが経験したことのない高齢社会を迎えます(図1)。それに向けて、国や都道府県、医療・介護の分野では何が始まっているのでしょうか。
「10年もある」ではなく「あと10年しかない」
これまで“高齢化”というと地方の問題のように考えがちでした。しかし、10年後に高齢者が急増するのは、むしろ都市部なのです(表1)。一方、地方では人口減により存続が難しくなる地方自治体が増えるという推計が出されています。
これは、医療・介護の分野にとっては重大な問題。人口構造が異なれば、必要とされる医療機能も変わってきます。そして、高齢者が増えればとりわけ、医療と介護が切れ目なく提供できる体制が欠かせません。そこで、医療・介護の分野では10年後を“2025年問題”と称して、急ピッチでさまざまな検討、準備が進められています。

高齢者が増えるということは、認知症をはじめ、複数の病気を抱えた患者の数も増えるということです。そのため、これまでのように手術件数や専門医を念頭に医療機関を選ぶのとは異なる、医療機関選びの視点が必要になってきます。
また、病状に応じて適切な機能を担う医療機関に転院することも当たり前になります。最期まで自宅で暮らしたいと希望するニーズを満たすには、在宅医療の充実も欠かせません。
このような問題が10年後という“目前”に迫っているのですが、世間一般ではまだまだ実感が湧かないというのが正直なところでしょう。でも、2025年まで「10年もある」ではなく「あと10年しかない」のです。
地域医療構想(ビジョン)の策定が始まる
その流れの中でさらに、2014年から病床機能報告制度、医療介護総合確保促進法が始まり、2015年からは地域医療構想(ビジョン)の策定が都道府県ごとに始まります。
先ほど触れたように、地域によって人口構成や課題も大きく異なり、それによって求められる医療・介護サービスも異なってきます。そこで、都道府県ごとに2025年にどのような医療機能がどれぐらい必要か、どのような医療や介護の連携が求められるかの構想を打ち立てて準備を進めていこうというのが地域医療構想なのです。
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