30年前の人口ピラミッドをベースに換算
年齢調整死亡率(直接法)とは、ある時点で実測された年齢階級別死亡率を、基準集団の人口で重み付けしたものです。現在、基準集団として用いられているのは、今から30年前(!)の1985年時点の年齢分布(1985年モデル人口)です。言い換えると、現時点での各年齢の死亡率が1985年に実現していたとしたらどうなるかを計算した数値が、年齢調整死亡率といえます。
実際、粗死亡率で見ると、がんの死亡率はどんどん上昇していますが(図3)、年齢調整死亡率は減少しています(図4)。がん対策の効果を測定する指標としては、年齢調整死亡率が適しています。
しかし、見方を変えれば、日本が将来的に1985年当時の人口ピラミッドに戻ることは、まず考えられません。それどころか、今後ますます高齢化は進行していきます。がんで亡くなる人も増えるはずです。「加速化プラン」で各種のがん対策に力を入れるとしても、高齢化の影響にはとうてい勝てないのです。
「死亡率」は重要な指標ではあります。ただ、この数値が下がることで、がん死にまつわるさまざまな問題が解決するとは言い切れないことも、認識しておくべきかもしれません。
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
