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病気にまつわる数字の話

「がん死は増加も、死亡率は減少」の不思議

死亡率は、30年前の人口ピラミッドをベースに換算される

 北澤 京子=医療ジャーナリスト

「5年生存率」「検査陽性」「基準値」「平均余命」「リスク」…。皆さんは、ニュースで見かける健康・医療関連の数字の意味を、正しく理解していますか? 病気にまつわる「数字」について、誤解しがちなポイントを分かりやすく解説するとともに、数字の読み方、解釈の仕方についても、わかりやすく説明します。

 日本人の死因ナンバー1は、いわずと知れた「がん」。国は、がん対策基本法に基づき、がん対策基本計画を立てています。今年6月、この計画に対する中間評価が行われました。

目標値には至らずもがん死亡率は減少

 がん対策基本計画では、全体目標の一つとして、10年間でがんの死亡率(1年間で人口10万人のうち何人が死亡したか)を20%減らすことを掲げています。基本計画を策定した当時(2005年)の死亡率(75歳未満)は「10万人対92.4」(人口10万人当たり92.4人)。それを20%減らすというのですから、92.4×(1-0.2)=「73.9」が目標ということになります。

 中間評価によると、これまでのデータを基に、10年間の最終時点である2015年の死亡率を予測したところ76.7となり、減ってはいるものの、目標の73.9にはあと少し届かない見通しであることが分かりました。

 そこで国は、喫煙率の減少や、がん検診の受診率向上などの対策をさらに進める「がん対策加速化プラン」を検討中です。喫煙率に関しては、たばこ税の引き上げや禁煙治療に対する保険適応の拡大、がん検診に関しては、かかりつけの医師や薬剤師による受診勧奨、職場でのがん検診の充実などが盛り込まれています。

がんで亡くなる人は増えているのに…

 さて、ここで「がんの死亡率を減らす」という目標自体に違和感を持つ人がいるかもしれません。今年だけでも、愛川欽也さんや川島なお美さんなど、著名人ががんで亡くなったというニュースをたびたび耳にします。

 がんの死亡率は減るどころか、むしろ増えているはずでは?と疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。それも当然でしょう。実際、2013年のがん死亡数は、1985年の約2倍に達しています。

 死亡数は増えているのに、死亡率は減っている―。 この疑問を解消するカギは、人口の高齢化にあります。

 2005年と2015年の人口ピラミッドを比較してみます(図1)。男女ともに人口が最も多い団塊の世代を見てみると、2005年は青のゾーン(15歳~64歳)だったのに、2015年にはオレンジのゾーンに入り、高齢者(65歳以上)の仲間入りをしています。赤のゾーン(75歳以上)の面積も明らかに増えています。全体として、この10年間で全体として高齢にシフトしていることは明らかです。

図1◎ 人口ピラミッド(左=2005年/右=2015年)
[画像のクリックで拡大表示]
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(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

「粗死亡率」と「年齢調整死亡率」の違い

 そして、がんの死亡率を年齢別に見ると、50歳代ころから急に高まることが分かっています(図2)。そのため、高齢者が増えるほど、がんの死亡率も高くなるのが普通なのです。

図2◎ がんの年齢階級別死亡率(人口10万対、全部位、2013年)
[画像のクリックで拡大表示]
(出典:国立がん研究センターがん対策情報センター)

 このように、がんの死亡率は、人口における年齢構成による影響が非常に大きいので、単純に死亡率だけを眺めていては、治療法の進歩や各種のがん対策による効果や影響が見えてきません。そのため、統計上、年齢による影響を取り除く工夫をしています。これを専門用語で「年齢調整」と言います。

 冒頭の、がん対策基本計画における「死亡率を20%下げる」という目標も、年齢の影響を取り除く前の死亡率(粗死亡率)ではなく、取り除いた後の死亡率(年齢調整死亡率)を20%減らすという意味なのです。

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