日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > 医療・予防  > 病気にまつわる数字の話  > 「200人が助かる」と「400人が死ぬ」は同じ?違う?  > 2ページ目
印刷

病気にまつわる数字の話

「200人が助かる」と「400人が死ぬ」は同じ?違う?

数値の受け取り方を変える「フレーミング効果」

 北澤 京子=医療ジャーナリスト

人は「フレーミング効果」に左右される

同じ意味合いを持つ数字でも、感じ方、考え方は大きく変わる。(©Aleksandar Kosev /123RF.COM)
同じ意味合いを持つ数字でも、感じ方、考え方は大きく変わる。(©Aleksandar Kosev /123RF.COM)

 このように、表現の違いによって意思決定に影響を及ぼすことを、フレーミング効果と呼びます。ある枠(フレーム)が設定されることにより、感じ方、考え方が変わってしまうことを指しています。カーネマンらは上記の実験から、ポジティブなこと(この実験では「助かる」)が書かれていれば、ネガティブなこと(この実験では「死ぬ」)が起こるかもしれないリスクを避ける方向に、ネガティブなこと(死亡)が書かれていれば、それ自体を回避するため、あえてリスクを引き受ける方向に、選択する傾向があると述べています。

 健康や医療に関する何らかの数値に接したら、フレーミング効果を意識して、いったん逆向きの表現をしてみるとよいと思います。たったこれだけのことですが、数値をより客観的にとらえることにつながります。

 たとえば、かぜをひいて会社を休んだ人が、市販のあるかぜ薬を飲めば、3日以内にかぜが治る確率が80%と予想されたとしましょう。「3日以内にかぜが治る割合が80%ある」とポジティブにとらえるか、「3日たってもかぜが治らない割合が20%ある」とネガティブにとらえるかで、そのかぜ薬を飲みたいと思うかどうか、気持ちが変化するかもしれません。ふだん健康な人が一般的なかぜにかかった場合、特に薬を飲まなくても、3日以内に治る場合もあるでしょうから、それも判断に影響を与えそうです。

 フレーミング効果は、別に健康や医療に限らず、日常生活によく登場します。たとえば、外出時に傘を持っていくかどうかを決める際、天気予報で雨が降る確率が30%と言っていたとすれば、逆に、雨が降らない確率は70%と考えてみる。もしかしたら、傘を持っていくかどうかの判断に影響するかもしれません(天気予報が何と言おうが、カバンの中に常に傘が入っているという人には、関係ありませんが…)。

 ただ、現実には、今回例示したように「数字」が明確であることはあまりなく、そもそも「有効である割合」がよく分からないことがほとんどです。つまり、「有効である割合(分子/分母)」を知ろうと思うと、「ある薬が有効であった人数(分子)」と同時に、「その薬を服用した総人数(分母)」が分からなければならないのですが、前者はさておき、後者が示されていないのが一般的だからです。

 この点については、次回引き続き考えたいと思います。

北澤京子(きたざわ きょうこ)
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
北澤京子(きたざわ きょうこ) 著書に『患者のための医療情報収集ガイド』(ちくま新書)、訳書に『病気の「数字」のウソを見抜く:医者に聞くべき10の質問』(日経BP社)など。(撮影:直江竜也)

先頭へ

前へ

2/2 page

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 脳を衰えさせる悪い習慣、活性化する良い習慣NEW

    「もの忘れがひどくなった」「単語がスッと出てこない」「集中力が落ちてきた」……。加齢とともに脳の衰えを実感する人は多いだろう。「このままだと、早く認知症になるのでは?」という心配が頭をよぎることもあるだろうが、脳の機能は加齢とともにただ落ちていく一方なのだろうか。どうすれば年齢を重ねても健康な脳を維持できるのか。脳に関する興味深い事実や、健康な脳を維持するための生活習慣について、過去の人気記事を基にコンパクトに解説していく。

  • 疲労解消は「脳の疲れ」をとることから

    しつこい「疲労」の正体は、実は脳の自律神経の機能の低下であることが近年の疲労医学の研究で明らかになってきた。本記事では、放置すると老化にもつながる「疲労」の怖さとその解消法を、過去の人気記事を基にコンパクトに解説していく。

  • 怖い病気を招く「中性脂肪」を食事・運動で徹底対策!

    健康診断でもおなじみの項目である「中性脂肪」。血液中の中性脂肪が150mg/dLを超えると、脂質異常症の1つ、「高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)」と見なされる。血管の老化を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を遠ざけるためにも、中性脂肪が上がるのを避けなければならない。そこで、今回はやっかいな中性脂肪の正体や、食事や運動でできる鉄板の対策法を一挙紹介していく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2022 Nikkei Inc. All rights reserved.