「横断研究」の落とし穴
このように、一見、因果関係があるように思えても、実は原因と結果が逆である可能性が否定できない場合、「因果の逆転」といいます。因果の逆転が起こるのは、「原因(運動)」と「結果(ズボンやスカートが履ける)」を同時に調べているからです。
このような調査の方法を、ある時点における状態をスパッと切り取って調べるという意味合いで「横断研究」といいます。ほとんどのアンケートや世論調査は横断研究なので、因果の逆転が起こり得ます。だからこそ、その解釈には注意する必要があります。
横断研究と縦断研究の違い
当たり前ですが、原因と結果の間には「時間的前後関係」があるはずです。すなわち、原因は常に結果より前に起こり、結果は常に原因より後に起こらなければなりません。横断研究では、原因と結果を同時に調べているため、時間的前後関係が分かりません。そのため、原因と結果をあべこべにしてしまう危険があるわけです。
本当に因果関係を調べようと思ったら、時間的前後関係が分かるような調査をする必要があります。つまり、ある時点では○○だったけれど、別の(後の)時点では△△だった、などと、時間的前後関係が明確な少なくとも2つの時点で調査をしなければなりません。
このような、時間の経過を追って調べる方法を、「縦断研究」といいます。因果関係を推定するには、横断研究だけでは不十分で、縦断研究を実施する必要があります。
読者の皆さんも、横断研究と縦断研究の違い、因果の逆転の可能性などを、ちょっと頭に入れておいてみてください。各種の調査結果の見え方や解釈が、報道内容とは異なるものになるかもしれません。
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
