健康寿命はどうやって計算する?
健康寿命は、どのように計算されるのでしょうか? 調べてみると、厚生労働省の研究班のウェブサイトに、健康寿命を計算する際の考え方が分かりやすく書かれていました。
ある集団に、AからEまでの5人がいたとします。それぞれについて、ピンクは「健康」、青は「不健康」な期間を示します。実際にはこんなにはっきりと「健康」と「不健康」とに分けられるわけではないと思いますが、あくまで模式的に示したものです。
たとえばAさんの場合、0歳~54歳3カ月までは「健康」でしたが、病気をして「不健康」になり、56歳9カ月のときに「健康」に戻りました。そこからしばらく健康に過ごしましたが、72歳3カ月で再び「不健康」になり、77歳6カ月で死亡しました。
この場合、Aさんの「健康」の期間は、0歳から54歳3カ月(54年3カ月)と、56歳9カ月から72歳3カ月(15年6カ月)の合計で69年9カ月です。一方、Aさんの「不健康」の期間は、54歳3カ月から56歳9カ月(2年6カ月)と、72歳3カ月から77歳6カ月(5年3カ月)の合計で7年9カ月です。Aさんは77歳6カ月で亡くなったので、生涯のうち健康な期間の割合は90%(69年9カ月÷77年6カ月=69.75÷77.5=0.9)になります。同じ計算をA~Eの5人それぞれで行い、平均値を求めれば、それがこの集団の健康寿命です。
既存の統計データを使う
実際には、個人の生涯にわたってのデータはありませんので、「国民生活基礎調査」および「生命表」という既存の統計から健康寿命を計算します。「国民生活基礎調査」の中には、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問があり、これに「ない」と答えれば「制限なし=健康」と判定します。そして、年齢階級(5歳きざみ)ごとに「健康」である割合を求めます。
次に、その健康な人の割合を「簡易生命表」に出ている「定常人口」という数値に掛けると、年齢階級別の「健康な定常人口」が計算できます(図2)。その総計から算出したものが健康寿命です。
この図からも明らかなように、年を重ねるほど「不健康」、つまり日常生活を誰かに支えてもらう人の割合が増えるのは確かです。ただ、全員が「不健康」になるわけでもありません。私たちにできることとしては、ごく平凡ですが、食事や運動といった、健康的なライフスタイルを心がけることではないかと思います。厚生労働省の研究班によると、「日常生活の制限あり」と関連があるものとしては、男性では「やせ(BMI18.5未満*)」、女性では「肥満(BMI25.0以上)」、そして男女ともに「歩行数が多くない(男性9000歩/日未満、女性8500歩/日未満)」ことだったそうです。
*BMI(Body Mass Index)は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値。体格指数とも呼ばれる。日本肥満学会は、25以上を肥満、18.5以上25未満が普通、18.5未満をやせとしている。
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
