しばらく前の話になりますが、日本人間ドック学会が2014年4月に公表した新しい「基準範囲 」(表1)は、マスコミでも多く取り上げられました。血圧値や血糖値など、よくある検査の多くで、現行の基準値より緩めの値が示されたからでしょう。
例えば、収縮期血圧値(いわゆる「上の血圧」)に関しては、下限88~上限147(今の基準で「異常なし」と判定されるのは、下限なし~上限129)、拡張期血圧値(いわゆる「下の血圧」)に関しては、下限51~上限94(同、下限なし~上限84)でした。素直に読むと、例えば血圧値が145/92mmHgの人は、今の基準では「異常なし」と判定してもらえませんが、今回発表された基準範囲には収まっていることになります。
逆は必ずしも真ならず
そもそもこの基準範囲とは、どのようにして求められたものなのでしょうか。
同学会の説明によると、2011年に人間ドックを受診した約150万人のうち、過去にがんなどの病気にかかったことがない、病気の治療のために薬物を常用していない、喫煙していない、といった幾つかの条件をすべて満たす約34万人をピックアップし、さらにその中から、基本検査9項目のデータが極端に高かった人と低かった人の両方を除外して、その時点で「超健康人」と考えられる約1万~1万5000人の検査値を調べたということです。
ここで気を付けないといけないのは、「逆は必ずしも真ならず」ということです。

仮に「超健康人」と判定された人の血圧値が145/92mmHgだったとしても、それは必ずしも、145/92mmHgの人を「超健康人」と判定する根拠にはならないのです。今回の調査では、「超健康人」に判定された人とされなかった人との比較がなされていません。そのため、超健康人に判定されなかった人の中に145/92mmHgの人がいるかどうかが分かりません。ましてや、現在の血圧値が、「今後もずっと“超健康”である」ことの保証にはなりません。