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病気にまつわる数字の話

病気のリスクや治療のメリットを「見える化」して意思決定しやすく

脳梗塞を起こすリスクは点数化できる

 北澤 京子=医療ジャーナリスト

自分のリスクを「見える化」して分かりやすく

 英国では一歩進んで、心房細動と診断された患者が抗凝固療法を行うかどうかの意思決定を手助けするためのツール(patient decision aid)が開発されています。患者が理解できるよう、具体的に分かりやすく書かれているのが特徴です。私が面白いと思ったのは、CHA2DS2-VAScスコアによって脳梗塞を起こすリスクを分類した上で、抗凝固療法により得られる利益の大きさを「見える化」している点です。

 例えば、CHA2DS2-VAScスコアが1点(低リスク)の人が1000人いたとして、全員が抗凝固療法を受けなかった場合、以後1年間で心房細動による脳梗塞を起こす人は6人です(数値は既存のデータから求めたもの)。この1000人全員が抗凝固療法を受けた場合、以後1年間で心房細動による脳梗塞を起こす人は2人に減ります。6人から2人を引いた4人は「抗凝固療法を受けたことによって脳梗塞を免れる人」、つまり、抗凝固療法でメリットを得る人ということになります。それ以外の994人は、抗凝固療法を行っても行わなくても脳梗塞を起こしません(図1)。

図1 ◎ CHA2DS2-VAScスコアが1点(低リスク)の人が心房細動による脳梗塞を起こすリスク
抗凝固療法を受けなかった場合
抗凝固療法を受けなかった場合
[画像のクリックで拡大表示]
抗凝固療法を受けた場合
抗凝固療法を受けた場合
[画像のクリックで拡大表示]
英国国立保健医療研究所(NICE)心房細動ガイドラインの付帯資料より一部改変
CHA2DS2-VAScスコアが1点の人が1000人いたとして、全員が抗凝固療法を受けなかった場合(左図)、以後1年間で心房細動による脳梗塞を起こす人は6人(赤い丸)。一方、1000人全員が抗凝固療法を受けた場合(右図)、心房細動による脳梗塞を起こす人は2人に減る。4人(黄色い丸)が抗凝固療法を受けたことによって脳梗塞を免れる人である。大半の人(緑の丸)は抗凝固療法に関係なく、脳梗塞を起こさない。

 同様に、CHA2DS2-VAScスコアが5点(高リスク)の人が1000人いたとして、全員が抗凝固療法を受けなかった場合、以後1年間で心房細動による脳梗塞を起こす人は84人です。この1000人全員が抗凝固療法を受けた場合、以後1年間で心房細動による脳梗塞を起こす人は27人に減ります。84人から27人を引いた57人は「抗凝固療法を受けたことによって脳梗塞を免れる人」、つまり、抗凝固療法でメリットを得る人ということになります。それ以外の916人は、抗凝固療法を行っても行わなくても脳梗塞を起こしません(図2)。

図2 ◎ CHA2DS2-VAScスコアが5点(高リスク)の人が心房細動による脳梗塞を起こすリスク
抗凝固療法を受けなかった場合
抗凝固療法を受けなかった場合
[画像のクリックで拡大表示]
抗凝固療法を受けた場合
抗凝固療法を受けた場合
[画像のクリックで拡大表示]
英国国立保健医療研究所(NICE)心房細動ガイドラインの付帯資料より一部改変
CHA2DS2-VAScスコアが5点の場合、全員が抗凝固療法を受けなかった場合(左図)は84人が脳梗塞を起こす(赤い丸)が、全員が抗凝固療法を受けた場合(右図)は27人に減る。57人は「抗凝固療法を受けたことによって脳梗塞を免れる人」(黄色い丸)である。

 このように図で表すと、高リスクは低リスクに比べて、メリットを得る人(黄色)がより多くなることが一目瞭然です。また、たとえリスクが高くても、図の中で最も大きな面積を占めているのは緑、つまり大半の人は脳梗塞を起こさないことを知るのも重要です。

 抗凝固療法には出血しやすくなるデメリットもありますので、自分のリスクの程度に応じて、抗凝固療法のメリットとデメリットのバランスも変わってくるはずです。

 自分にとってのメリットとデメリットを、その程度を含めて「見える化」できれば、より納得して医療を受けられるのではないでしょうか。

北澤 京子(きたざわ きょうこ)
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
北澤 京子(きたざわ きょうこ) 著書に『患者のための医療情報収集ガイド』(ちくま新書)、訳書に『病気の「数字」のウソを見抜く:医者に聞くべき10の質問』(日経BP社)など。(撮影:直江竜也)

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