「5年生存率」「検査陽性」「基準値」「平均余命」「リスク」…。皆さんは、ニュースで見かける健康・医療関連の数字の意味を、正しく理解していますか? 病気にまつわる「数字」について、誤解しがちなポイントを分かりやすく解説するとともに、数字の読み方、解釈の仕方についても、わかりやすく説明します。

以前、私が翻訳した『病気の「数字」のウソを見抜く』(スティーブン・ウォロシン他著、日経BP社、2011年)には、「今後10年間に◯◯(病名)で死ぬのは1000人中何人か」をまとめた一覧表が載っていました。
たとえば、喫煙している50歳の男性なら今後10年間に肺がんで死ぬのは1000人中18人、喫煙していない60歳の女性なら今後10年間に脳卒中で死ぬのは1000人中8人、といった具合です。リスクが数値で示されるので、具体的なイメージがしやすく、とても面白いと思ったのですが、残念ながら数値はアメリカ人のもの。日本人バージョンがあればいいのに、と訳しながら考えていました。
健康診断の数値を入力するだけでリスクを予測
国立がん研究センターや藤田保健衛生大などの研究者が2016年5月に発表した「循環器疾患リスクチェック」で、それが(一部)実現しました。たとえば、
- 54歳・男性、喫煙習慣あり
- ・降圧薬の内服や糖尿病の治療は特にしていない
- ・血圧:収縮期(上の血圧)153mmHg、拡張期(下の血圧)92mmHg
- ・空腹時血糖:132mg/dL
- ・脂質:HDLコレステロール35mg/dL、LDLコレステロール158mg/dL、中性脂肪(トリグリセライド)185mg/dL
という人の場合、これらの情報を入力すると、今後10年間に
- 心筋梗塞を発症する確率(リスク) 12.6%
- 脳梗塞を発症する確率(リスク) 9.7%
と瞬時に出てきます。言うまでもなく、心筋梗塞や脳梗塞は、命にかかわる重大な病気です。同じ条件の54歳の男性が100人いたら、10年以内に12人か13人は心筋梗塞、ほぼ10人は脳梗塞を発症すると言われれば、単に「血圧が高いから気をつけて」と言われるよりもずっとリアルです。
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