アメリカでは50~74歳でマンモグラフィー検診を推奨
アメリカではどうでしょうか。2016年1月に発表された米国予防サービスタスクフォース(USPSTF)によると、平均的な50~74歳の女性に対して、2年に1度のマンモグラフィー検査が推奨されています。検診によるメリットが最も大きいのは60~69歳の女性です。
40~49歳では推奨する度合いがやや下がります。乳がんによる死亡を減らすというメリットはあるものの、偽陽性と出て不要な生検を受けるデメリットも考えられるため、検診を受けるかどうかは、医師と相談して個別に決めてほしいと述べています。ただし、親やきょうだいに乳がんになった人がいれば、自分も乳がんになるリスクがより高いと予想されるので、検診を受けることのメリットがその分大きくなります。
具体的な数値を確認しておきましょう。乳がん死亡率減少効果について先行研究を精査した論文(Ann Intern Med.2016;164:244-55.)によると、39~49歳では8%(相対リスク0.92[95%信頼区間*0.75-1.02])50~59歳では14%(0.86[95信頼区間0.68-0.97]、60~69歳では33%(0.67[95%信頼区間0.54-0.83])、70~74歳では20%(0.80[95%信頼区間0.51-1.28])でした。50~69歳の女性1万人が10年間検診を受けた場合、12.5人が乳がんによる死亡を免れる計算になるそうです。
*95%信頼区間とは、仮に同じ研究を100回行ったとしたら、そのうち95回で、結果がその区間のどれかの値をとるという意味です。相対リスクが1より小さい(=乳がん死亡率が減る)と推定されたとしても、95%信頼区間が1をまたいでいれば、1より小さい(=乳がん死亡率が減る)こともあれば1より大きい(=乳がん死亡率が増える)こともあるということで、乳がん死亡率減少効果は、統計学的に有意ではないと解釈します。95%信頼区間が1をまたいでいなければ(=95%信頼区間の上限でも1を超えていなければ)、100回行ったうち95回は乳がん死亡率が減るということで、統計学的に有意な差をもって、乳がん死亡率は減ると解釈します。
ただし、死亡を減らすといっても、それはあくまで乳がんによる死亡のことです。死因を限定せず、すべての死因をまとめた総死亡率減少効果は認められませんでした(相対リスク0.99[95%信頼区間0.97-1.002])。
そのがんによる死亡は減ってもトータルの死亡は減らない
この点について、総死亡が減らないのに、検診が有効であると言えるのかと疑問を呈する人もいます(BMJ.2016;352:h6080.)。実は、乳がん検診に限らず、がん検診により早期発見・早期治療が行われ、そのがんによる死亡率が減ったとしても、総死亡の減少効果がランダム化比較試験で確認されているものはほとんどないとのことです(Int J Epidemiol.2015;44:264-77.)。
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医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授

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