臨床試験の結果を自分にあてはめられるか
ダイエット効果において、重要なのはその程度です。BMIが30.0から29.4になるということは、身長161cm(1.61m)の人の場合、77.8kgから76.2kgになることを意味します。1.6kg分ダイエットできたわけですが、この程度では残念ながら、見かけ上はさほど変わらないかもしれません。同様に、腹部内臓脂肪面積は、14.7cm2、つまり3.8cm四方分が減った計算になります。
このように、論文をチェックすることにより、基本情報に書かれているアウトカムがどの程度のものなのか、大きさを知ることができます。単に「内臓脂肪を減らすのを助け、高めのBMIの改善に役立つ」と言われるのと比べると、受ける印象が異なるのではないでしょうか。

基本情報のアウトカム、つまり「ラクトフェリン群(I)は対照群(C)に比べて、腹部内臓脂肪面積は平均で12.8cm2、BMIは0.9kg/m2低い値となった」という意味を確認しておきましょう。
BMIが0.9減ったというのは、ラクトフェリン群では0.6減り、対照群では0.3増えたために、差を取ると0.9減ったことになるという計算だと思われます。腹部内臓脂肪面積も同様に、対照群との差を取った数値を出しています。
しかし、消費者にとっては、ナイスリムを飲むか、飲まないかの選択が問題なのであって、ナイスリムを飲まなければ乳糖入りの別のサプリを飲むわけではありません。試験結果の記載の仕方としては正しいのですが、消費者向けの情報としては、より分かりやすくするためにもう一工夫あればと感じました。
加えて考えないといけないのは、肥満の人を対象にした臨床試験の結果を、それほど太っているわけではない人にも当てはめられるのかという点です。基本情報でも、「本試験は、BMI25以上の腹部肥満傾向の方を対象にした試験である」と但し書きがあります。臨床試験参加者のBMIから考えると、BMIが25~27程度の人、さらにはそれ以下の肥満ではない人にダイエット効果があるかどうかについては、(調べられていないので)不明です。
今回はラクトフェリンを例にPICOを確認し、そこに示されているデータの意味を考えてみました。機能性表示食品は、制度上は表示内容に関する審査がなく、メーカーなどがエビデンスを届け出ければ表示が可能な仕組みです。言い換えれば、選択と利用は消費者の自己責任に委ねられています。それだけに、積極的な活用を検討されている方は、届け出内容についても注目してみてください。きっと参考になるはずです。
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授

