「5年生存率」「検査陽性」「基準値」「平均余命」「リスク」…。皆さんは、ニュースで見かける健康・医療関連の数字の意味を、正しく理解していますか? 病気にまつわる「数字」について、誤解しがちなポイントを分かりやすく解説するとともに、数字の読み方、解釈の仕方についても、わかりやすく説明します。

2015年9月、タレントの北斗晶さんが、乳がんが見つかったことをブログで公表して以来、全国各地で乳がん検診を受ける人が増えているそうです。日本ではがん検診の受診率が諸外国に比べて低いことがかねて指摘されており、乳がん検診の受診率は43.4%にとどまっています(目標は50%)。2015年暮れに公表された、「がん対策加速化プラン」でも、がん検診の受診率を高めるための対策がいろいろと盛り込まれていました。
がん検診を受けたほうがいい理由、言い換えればがん検診のメリットについて、漠然と「早期発見→早期治療→命が助かる(延命できる)」と考えている人が多いと思います。それは確かにそうなのですが、でも実は、より多くのがんを早期に見つけるだけでは、がん検診が「有効」であるとはいえません。
その理由は、仮に早期にがんを見つけたとしても、それは単に、いずれ見つかるがんを早めに(無症状のうちに)見つけているだけで、生命予後(*1)には無関係かもしれないからです(リードタイム・バイアス)。また、がん検診で見つかるがんは、進行するのが比較的ゆっくりながん(そのため生命予後もよい)であることが多いことも知られています(レングス・バイアス)。したがって、検診を導入した後に、5年生存率(生存割合)の数値が高くなったからといって、それだけでは、検診が有効であるという根拠にはなりません。
このあたりは「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」でも図入りで説明されていますので、関心のある方は参照してください。がん検診が「有効」であるというためには、生存率(生存割合)の増加ではなく、死亡率(死亡割合)の減少でみなければならないのです。
*1)生命予後とは、病気・手術などの経過において、生命が維持できるかどうかについての予測のこと。