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病気にまつわる数字の話

「血液をサラサラにする薬」の効果のほどは?

アスピリンに関する研究で明らかになった意外な結果

 北澤 京子=医療ジャーナリスト

JPPP試験における一次エンドポイントの累積発生割合
出典:日経メディカル 2015年1月号
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 その結果、非アスピリン群でも、一次エンドポイントを起こした人は2.96%だったのです。アスピリン群の方がわずかに少ないと思うかもしれませんが、2.77%と2.96%の差は、統計学的に見て意味のある差とはいえません。

 要するに、アスピリンを飲んでも飲まなくても、心血管疾患のかかりやすさは変わらなかったのです。実際、研究結果を示した左図を見ると、アスピリン群と、非アスピリン群とで、折れ線がほとんど重なっていることが分かります。

 ここで言いたいのは、薬(やサプリなどを含め、治療法・予防法なら何でも)が効くかどうかを判断する際には、その薬を飲んだ人のことだけで考えてはいけないということです。飲まなかった人との比較でなければ、薬が効いたかどうかは分かりません。このことは、いくら強調してもしすぎることのないくらい重要だと、私は思います。

 実際には、ある治療を行った場合と、行わない場合を比較するのは、意外に難しいものです。例えば、自分の病気の治療法にAとBの2通りがあった場合に、Aを行いながら同時にBを行って比較することはできません。自分にとってAとBのどちらがよいのか比較してみたくても、いったんAを行ってから、タイムマシンで治療前の状態に戻り、今度はBを行う、などということはできないのです。

 だからこそ私たちは、過去のいずれかの時点で、自分以外のだれかが参加した臨床試験の結果を参考にしながら、自分だったらどうしたいかという判断をするわけです。今回紹介したJPPP試験でも、試験に参加した1万4464人の患者さんは、約10年も前の2005~07年に登録されていました。過去の患者さんが試験に参加してくれたからこそ、現在の患者にとって有用な情報が得られるのです。

あらゆる治療・予防法にはメリットとデメリットがある

 アスピリンの副作用として、出血が起こりやすくなることが知られています。そもそもアスピリンは、止血に関係する血小板の働きを抑えるので、出血が起こりやすくなることは当然予想されます。JPPP試験では、輸血や入院を必要とするほどの重症の頭蓋外出血は、アスピリン群で0.86%、非アスピリン群で0.51%と、アスピリン群の方が多く、これは統計学的に見て意味のある差でした。そのためこの試験は、当初予定されているより早期に終了されました。アスピリンを続けることにより、患者をみすみす出血のリスクにさらすことはできないからです。

 アスピリンが心筋梗塞や脳卒中を予防する効果があるならば、高血圧や糖尿病を患う高齢者にとってメリットがあるでしょう。しかしその半面、アスピリンの副作用で出血し、入院しなければならないとすれば、それはアスピリンのデメリットといえるでしょう。どんな治療法にも、メリットとデメリットの両方があります。判断する際には、その両方を比較するだけの心の余裕をもちたいものです。

北澤京子(きたざわ きょうこ)
医療ジャーナリスト・京都薬科大学客員教授
北澤京子(きたざわ きょうこ) 著書に『患者のための医療情報収集ガイド』(ちくま新書)、訳書に『病気の「数字」のウソを見抜く:医者に聞くべき10の質問』(日経BP社)、『過剰診断』(筑摩書房)など。(撮影:直江竜也)

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