日経グッデイ

Dr.松倉のサプリのすすめ

感情が浮き沈み、ネガティブ思考になったら「男性更年期」を疑う

長引くと厄介。サプリや“塗るホルモン薬”で対処しよう

 松倉知之=松倉クリニック&メディカルスパ院長・医師

忙しい日々のなか、健康のため、若々しさアップのためにサプリメントを活用するビジネスパーソンは多いはず。でも、そのサプリメントが体内で十分に力を発揮していないとしたら? いま注目の理論「分子整合栄養医学」をもとに、松倉知之先生があなたにとって本当に必要な栄養素と、“本当に効く”サプリメントのとりかたを提案します。

男性更年期は「自覚しにくく、長引きやすい」

「最近ストレスが強いせいかな」「歳をとっているのだから仕方ない」などと、なんとなく感じている不調を放置していませんか。(©Andriy Popov-123rf)

 最近、なんだか気持ちの浮き沈みが激しくなることはないでしょうか。ときに「自分はダメだ」「きっとうまくいかない」といったネガティブ思考も頭が占領してしまう…。

 このようなメンタルの変化は、あなたが男性更年期、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」を迎えたサインかもしれません。

 更年期というと、閉経を迎える女性特有の症状だと思われがちですが、実は男性にもあるのです。

 LOH症候群は「症状が分かりにくい」「放置すると10~15年続く」という特徴があります。だからこそ、自分で早めに自覚する必要があるのですが、正しく理解している人は非常に少なく、「最近ストレスが強いせいかな」「歳をとっているのだから仕方ない」などと、なんとなく感じている不調を放置してしまうことが多いに違いありません。

 しかし、LOH症候群に早く気付けば有効な対策がある、ということを今回はお伝えしたいと思います。

 女性の更年期障害は、50歳ごろの閉経期に「女性ホルモン」の分泌が急激に低下することによって起こります、イライラや体のほてり、不眠、疲れやすさなど心身にさまざまな症状が現れます。

 一方、LOH症候群もテストステロンなどの「男性ホルモン」の低下によって起こります。ホルモンの分泌量はゆっくりと下降していくため、女性ほどはっきりとした症状が現れにくい点が大きな違いです。しかし、低下したサインとなる症状は、性欲の減退や気力の衰え、感情の起伏が大きくネガティブになった―などに注意していれば気付くことができるはずです。ちなみに、男性ホルモンは、活力の源ともいえるホルモン。仕事へのバイタリティーを与えることに加え、心臓病や前立腺疾患、肥満やアルツハイマー病を予防するなどの働きもあります。

LOH症候群をセルフチェック! 4つの症状に要注意

 男性ホルモンは、通常、25歳ぐらいが分泌のピークです。健康な人の場合、50歳ぐらいでは「まだまだ元気!」であることが多いのですが、日々直面するストレスが強いと、40代から分泌低下に加速がつき始めます。

 男性ホルモンは主に精巣で作られますが、ストレスに対処してホルモンを分泌する臓器である副腎も消耗することで、影響を受けるのです。じわじわと分泌量が減り続けるために、LOH症候群だと気付かずにそのままやり過ごしてしまうと45~60歳ぐらいまで、長く続いてしまう人もいます。次に挙げる4つの症状に気付いたらLOH症候群の可能性が高いでしょう。

1.感情の起伏が大きくなり、ネガティブ思考になる

 たいしたことでもないのにイライラしたり、カッとして怒鳴ってしまうものの、あとでクヨクヨと後悔する。こんな気持ちの浮き沈みに悩んでいませんか。また、物事を常に悲観的にとらえるといった、メンタル面での変化はLOH症候群の最大の特徴です。男性ホルモンは精神安定にも関わるため、精神面に変化が現れるのです。

2.性欲が低下する

 性欲や男性機能が明らかにダウンする、というのも重要なサインです。

3.闘争心がなくなる

 男性ホルモンは、“闘争ホルモン”といっていいくらい、日々のやる気、意欲を高めることにも関わっています。「やる気が出ない」「仕事がつまらない」と感じることが多くなります。

4.筋肉の質が低下し、体がたるむ

 男性ホルモンが低下すると、筋肉にも影響が及びます。筋肉量は変わらなくても、その質が低下してしまいます。弾力性が失われたり、パワーを発揮しにくくなります。いつも駆け上がっている階段なのに、上るのがしんどくて最近エスカレーターを使うようになった、というような変化はありませんか? また、風呂上がりに鏡で自分の体を見たときに、胸や背中のたるみに気付き、「老けたな」と実感するかもしれません。

サプリメントでホルモン力をアップ! 昼夜のメリハリがカギ

 LOH症候群というと、「男性ホルモンの低下が原因」とストレートに結びつけるとわかりやすいのですが、私はもっとさまざまな要因が複合的に絡んでいると思っています。たとえば、食生活が乱れ、糖質の多い栄養ドリンクに頼って元気を取り戻そうとしている人は、それが体内の酸化を進め、ストレス源となっているかもしれません。また、タンパク質やビタミンB群が不足することによって睡眠に必要なメラトニンなどのホルモン分泌が低下し、よく眠れずに疲労がとれないことが要因かもしれません。夜は睡眠の質を高めて体をケアすることも意識しましょう。

 こうした生活の改善の助けになるのがビタミンB群です。特に、B群に含まれるナイアシンは精神安定効果があり、しかもコレステロール値を下げる働きもあります。これまで何度かご紹介したように、ビタミンB群として、1日当たり4000mgを目安にとるとよいでしょう(参照記事:「疲労回復、集中力アップにはビタミンB群をガッツリ摂る」)。

サプリで補うならDHEAを!

 さらに、LOH症候群にサプリメントで対応する場合には、性ホルモンの前駆体である「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)」が有効です。加齢とともに男女とも体内のDHEA濃度は減少するとされていますが、そもそもこのホルモンは、タンパク質の合成を促し、細胞を若々しく保ち、ストレスを緩和したり脳機能を向上させたりする働きがあります。

 クリニックでは血液検査を行い、どのくらい不足しているのかを確認してから服用を薦めていますが、それが難しいようなら、1日当たり50mgほどを目安に取ってみましょう。ただし、人によって必要量は異なります。もしも、体内で過剰になると、ニキビや脂っぽい肌の原因になるので、気になる症状があったら摂るのを中止してください。LOH症候群で起こる不調を改善したいと考えている人は、早めに泌尿器科などの専門医に相談することをお勧めします。

ホルモン補充療法ならばすぐに効果が実感できる

 性欲の低下は男性にとって大変にショックなことです。感情の起伏が激しいと人間関係のトラブルも発生しやすく、仕事の意欲低下もつらい。そんなLOH症候群に関しては「すぐに効果を実感できる対処法」があるのです。それが、ホルモン補充療法です。

 通常、保険診療で行われている男性ホルモンの補充には、注射薬が用いられます。化学合成によって作られたホルモンであるため、体内で代謝されず少量で効果を示すのが特徴。投与すると、男性ホルモン濃度が一気に上昇するため、前立腺を刺激して前立腺肥大リスクが高くなるという注意点があります。

 私のクリニックで取り扱っているのは、体内で代謝される性質を持つ「ナチュラルホルモン」という種類です。注射ではなく、塗り薬を太ももの内側や二の腕の内側に塗るもので、男性ホルモン値を長く一定に維持します。

 私自身も40代からずっと使っていますが、よく「若さを保つために、何をやっているの?」と尋ねられるのは、ナチュラルホルモンのおかげかもしれません。当院では、ホルモン値を測った上で処方をするので投与量には個人差が大きいのですが、1カ月当たり2万円(自由診療)ほどからの負担でこの薬の処方を受けることができます。ホルモンがサプリメントと異なるのは、その即効性です。使い始めてすぐに効果を実感する人が多いようです。

(まとめ:柳本 操=フリーライター)

松倉知之(まつくら ともゆき)
松倉クリニック&メディカルスパ(東京都渋谷区)院長・医師
松倉 知之(まつくら ともゆき) 1962年東京生まれ。1988年北里大学医学部卒業、同大形成外科勤務。99年より現職。ボトックス、ブルーピール、レチノイン酸などを日本に導入したことで知られる。一人ひとりの患者に結果の出る最良の治療法を提示することを信条とする。日本形成外科学会・日本美容外科学会・日本整形外科学会・国際形成外科学会専門医、医学博士。