忙しい日々のなか、健康のため、若々しさアップのためにサプリメントを活用するビジネスパーソンは多いはず。でも、そのサプリメントが体内で十分に力を発揮していないとしたら? いま注目の学問「分子整合栄養医学」を基に、医師の松倉先生があなたにとって“本当に必要な”栄養素と、“本当に効く”サプリメントの取り方を提案します。
はじめまして。私は東京都渋谷区のクリニックで日々、アンチエイジング医療に携わっています。診療現場では「疲れやすい」「風邪が長引きやすい」といった不調に悩む患者さんに対して、血液検査の結果を見ながら、最も必要な栄養素をアドバイスしています。
体内で不足している栄養素を必要なだけ補うことによって、体の機能を高め、病気の進行を抑えたり、症状の改善を図る─、これが、最近注目されている「分子整合栄養医学」の考え方です。そこで積極的かつ正しく活用してもらいたいのが、サプリメントなのです。
このコラムでは、私がみなさんにお伝えしたいサプリメントの取り方をお話していきましょう。
食べれば食べるほど栄養失調になっていく?

今回のテーマは、現代人が「栄養失調」に陥っている状況についてです。「栄養失調」と聞くと、栄養が不足してやせ細った状態が思い浮かびますね。「自分は毎日食事を取っているし、栄養は足りているはず」と思う人もいるかもしれません。
大辞林(三省堂)によると、栄養失調とは「摂取する栄養素の不足あるいは過剰によって起こる体の異常状態」とされています。
日本が貧しかった頃と比べると、今は食べるものに困ることはなくなり、少なくとも栄養が不足する心配はなくなりました。しかし、ベストな状態ではありません。過剰に取り過ぎている栄養素によって、不調を感じている人が大勢いるのです。
「糖質過多」は体調や気分の不安定を招く
まずはあなたの日々の行動や体の状態について、下のチェックリストで確認してみましょう。このチェックでは、あなたが現代人の特徴である「糖質の取り過ぎ(過多)」あるいは「たんぱく質の不足」に陥っていないかを確かめることができます。当てはまる項目が多いのはどちらでしょうか? 両方とも多く当てはまる、という人もいるかもしれません。
糖質の取り過ぎ(糖質過多)
- ご飯やパン、麺類のほか、甘いもの、炭酸飲料が好き
- ストレスを感じると甘いものが無性に欲しくなる
- お腹が空くとイライラ、そわそわする
- 肌のシワが深くなり、たるみが増えてきた
たんぱく質の不足
- 忙しくて食事を抜いたり、体重管理のために食事量を減らしたりする
- 年齢とともに姿勢が悪くなってきた
- 髪がパサついてきたり、爪に縦の筋が増えたりしてきた
- 昼食後はいつも睡魔が襲ってくる
忙しい現代人は、知らず知らずのうちに糖質オーバーの食生活に陥りがちです。糖質は「糖」とも呼ばれていますが、必ずしも砂糖のように「甘いもの」とは限りません。例えば、限られた時間で手軽に食べられるコンビニのおにぎりやパン、丼ぶりもののほか、疲れたときに頼る栄養ドリンクにも糖質が多く加えられています。飲むと爽快感がたまらないビールや炭酸飲料にも、糖質がしっかり含まれています。
そもそも糖質は脳を働かせるエネルギー源ですから、疲れたときに甘いものが欲しくなるのは自然な働きです。しかし、「糖質過多」の生活に体が慣れてしまうと、チョコレートひとかけらでは済まなくなります。より多くの糖質を取らないと、脳が満足しなくなってしまうのです。
このような糖質過多の人には、空腹になるとやたらとイライラしたり、会議中なのに眠くなったりする状態が起こりがち。これは血液中を流れる「ブドウ糖」の量、つまり「血糖値」が食後2~3時間の間に、まるでジェットコースターのように上がったり下がったりすることが原因です。甘いものを取り続けることで脳のセンサーが鈍っていき、野菜の自然な甘みすら感じにくくなってしまうこともあります。
もう一つ、仕事に追われ食事を抜く人や、ダイエットで食事の量を減らしている人に多いのが「たんぱく質不足」です。
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