日経グッデイ

Dr.松倉のサプリのすすめ

飽食時代の現代人に忍び寄る「栄養失調」

忙しい人ほど栄養バランスがどんどん崩れていく!?

 松倉知之=松倉クリニック&メディカルスパ院長・医師

忙しい日々のなか、健康のため、若々しさアップのためにサプリメントを活用するビジネスパーソンは多いはず。でも、そのサプリメントが体内で十分に力を発揮していないとしたら? いま注目の学問「分子整合栄養医学」を基に、医師の松倉先生があなたにとって“本当に必要な”栄養素と、“本当に効く”サプリメントの取り方を提案します。

 はじめまして。私は東京都渋谷区のクリニックで日々、アンチエイジング医療に携わっています。診療現場では「疲れやすい」「風邪が長引きやすい」といった不調に悩む患者さんに対して、血液検査の結果を見ながら、最も必要な栄養素をアドバイスしています。

 体内で不足している栄養素を必要なだけ補うことによって、体の機能を高め、病気の進行を抑えたり、症状の改善を図る─、これが、最近注目されている「分子整合栄養医学」の考え方です。そこで積極的かつ正しく活用してもらいたいのが、サプリメントなのです。

 このコラムでは、私がみなさんにお伝えしたいサプリメントの取り方をお話していきましょう。

食べれば食べるほど栄養失調になっていく?

栄養ドリンクも飲んでいるのに栄養失調?(©George Tsartsianidis/123RF.com)

 今回のテーマは、現代人が「栄養失調」に陥っている状況についてです。「栄養失調」と聞くと、栄養が不足してやせ細った状態が思い浮かびますね。「自分は毎日食事を取っているし、栄養は足りているはず」と思う人もいるかもしれません。

 大辞林(三省堂)によると、栄養失調とは「摂取する栄養素の不足あるいは過剰によって起こる体の異常状態」とされています。

 日本が貧しかった頃と比べると、今は食べるものに困ることはなくなり、少なくとも栄養が不足する心配はなくなりました。しかし、ベストな状態ではありません。過剰に取り過ぎている栄養素によって、不調を感じている人が大勢いるのです。

「糖質過多」は体調や気分の不安定を招く

 まずはあなたの日々の行動や体の状態について、下のチェックリストで確認してみましょう。このチェックでは、あなたが現代人の特徴である「糖質の取り過ぎ(過多)」あるいは「たんぱく質の不足」に陥っていないかを確かめることができます。当てはまる項目が多いのはどちらでしょうか? 両方とも多く当てはまる、という人もいるかもしれません。

糖質の取り過ぎ(糖質過多)

  • ご飯やパン、麺類のほか、甘いもの、炭酸飲料が好き
  • ストレスを感じると甘いものが無性に欲しくなる
  • お腹が空くとイライラ、そわそわする
  • 肌のシワが深くなり、たるみが増えてきた

たんぱく質の不足

  • 忙しくて食事を抜いたり、体重管理のために食事量を減らしたりする
  • 年齢とともに姿勢が悪くなってきた
  • 髪がパサついてきたり、爪に縦の筋が増えたりしてきた
  • 昼食後はいつも睡魔が襲ってくる

 忙しい現代人は、知らず知らずのうちに糖質オーバーの食生活に陥りがちです。糖質は「糖」とも呼ばれていますが、必ずしも砂糖のように「甘いもの」とは限りません。例えば、限られた時間で手軽に食べられるコンビニのおにぎりやパン、丼ぶりもののほか、疲れたときに頼る栄養ドリンクにも糖質が多く加えられています。飲むと爽快感がたまらないビールや炭酸飲料にも、糖質がしっかり含まれています。

 そもそも糖質は脳を働かせるエネルギー源ですから、疲れたときに甘いものが欲しくなるのは自然な働きです。しかし、「糖質過多」の生活に体が慣れてしまうと、チョコレートひとかけらでは済まなくなります。より多くの糖質を取らないと、脳が満足しなくなってしまうのです。

 このような糖質過多の人には、空腹になるとやたらとイライラしたり、会議中なのに眠くなったりする状態が起こりがち。これは血液中を流れる「ブドウ糖」の量、つまり「血糖値」が食後2~3時間の間に、まるでジェットコースターのように上がったり下がったりすることが原因です。甘いものを取り続けることで脳のセンサーが鈍っていき、野菜の自然な甘みすら感じにくくなってしまうこともあります。

 もう一つ、仕事に追われ食事を抜く人や、ダイエットで食事の量を減らしている人に多いのが「たんぱく質不足」です。

 例えば、ダイエットで食事の量を減らすと、肉や魚といったたんぱく質の摂取量が減ってしまいがちです。たんぱく質は骨や皮膚、髪の毛や筋肉の材料となり、細胞の代謝と活性に必要な酵素・ホルモンの産生にも大きく関わる重要な成分です。新陳代謝を促すためには、毎日コンスタントに取る必要があります。

 たんぱく質が不足すると髪がパサつき、肌の潤いが減り、筋肉量が減って姿勢が悪くなるなど、見た目の老化を招きます。新しい細胞を作る材料が不足するためにエネルギーも湧かず、「なんとなくだるい」という状態が続いたりもします。

 食事量を減らすダイエットによって筋肉量が減少したところに、再び元通りの食事量に戻せば、失った筋肉の分のエネルギー消費量が落ちるため、かえって脂肪がつきやすくなる困った状態に陥ります。これがリバウンドの仕組みです。ですから、患者さんの中に「ダイエットをしたい」という人がいると、私は必ず「たんぱく質は減らさずに、十分な量をとってください」と指導しています。

大半の人が栄養の「量」を見落としている

 糖質、たんぱく質の二つについてお話しましたが、それ以外の栄養素についても少し触れておきましょう。

 みなさんは、ビタミンやミネラルといった栄養素が細胞で最も効果的に働く「至適用量」は個人によって異なる、ということをご存じでしょうか。

 おなじみのビタミンCは、人によって体内での使われ方が異なり、細胞内のコラーゲン合成に使われる場合もあれば免疫調整に優先的に使われる場合もあります。少量では一部分の働きしか発揮しなくても、たっぷり取ることによって、まるで階段を水が流れ落ちていくようにすべての機能を満たす、という性質を持っています。

 ところがわが国では、厚生労働省が年齢ごとの栄養所要量を定めていることが誤解を招くことにつながっているようです。

 栄養所要量とは、ビタミンCであれば「不足すると壊血病(かいけつびょう)が起こる」、ビタミンB1ならば「不足すると脚気(かっけ)を発症しやすくなる」というように、「病気を予防するために最低限とるべき量」を定めたものです。現実には個体差があるため、必要な量は異なるもの。それなのに、この栄養所要量を「これ以上とると良くない」と勘違いしている人が大変多く、残念に思います。

 それに比べて米国では、積極的な病気の予防を目的とした量(例えばビタミンCならわが国の成人の栄養所要量である1日100mgをはるかに超える同500~2000mg)が薦められることもあります。病気の原因の一つとされる酸化ストレスから体を守るために必要な栄養量について盛んに研究が行われ、食事だけで補えない分はサプリメントで補うライフスタイルが浸透しているのです。

 一つの不調を手がかりに、本当に必要な栄養素の至適用量を満たすことで、全身の細胞に働きかけるわけですから、その不調が改善されるだけでなく、肌や髪の毛まで若返るなどのうれしいおまけもついてきます。美と健康は常にイコールで結ばれますから、患者さんの喜びも大きい。それが私の診療の原動力にもなっています。

 不調は、日々の「栄養素」のアンバランスから起こっていることが多いものです。崩れたバランスを正し、不調を改善するためのサプリメントの選び方について、次回からお話していきましょう。

Dr.松倉のこぼれ話  「私が栄養素に注目し始めたきっかけ」
人それぞれに最も適した量の栄養素を補う「分子整合栄養医学」を私は診療に取り入れています。医療と栄養学を直接結びつけるこの考え方は、日本ではまだなじみが薄いかもしれません。わかりやすく説明すると、「一つひとつの栄養素が体内の細胞の機能を維持するために働く量を、その人にとって最適な量に整えること。体の機能を高め、病気や老化を改善する」という理論です。細胞が必要とする栄養というジャンルに着眼したこの理論は、ノーベル賞を二度受賞したライナス・ポーリング博士らにより生み出され、1960年代からカナダや米国などの臨床医師らによって治療法が確立しました。海外では精神疾患の治療として応用され始めましたが、今ではほぼすべての医療分野へと広がり、わが国では現在、全国およそ700施設でこの理論を基にした栄養療法が実践されています。

(まとめ:柳本 操=フリーランスエディター)


松倉 知之(まつくら ともゆき)
松倉クリニック&メディカルスパ(東京都渋谷区)院長・医師
松倉 知之(まつくら ともゆき) 1962年東京生まれ。1988年北里大学医学部卒業、同大形成外科勤務。99年より現職。ボトックス、ブルーピール、レチノイン酸などを日本に導入したことで知られる。一人ひとりの患者に結果の出る最良の治療法を提示することを信条とする。日本形成外科学会・日本美容外科学会・日本整形外科学会・国際形成外科学会専門医、医学博士。