「カルニチン+筋肉量を増やす」の合わせ技が重要!
では、「カルニチンをとれば脂肪が燃えてやせられる」のかと言うと、そう単純にはいきません。
ミトコンドリアは全身のすべての細胞にありますが、特にエネルギーを必要とする筋肉細胞の中に多く存在します。筋肉量が少ないと筋肉細胞の中に存在するミトコンドリアの総数も減る。だから、何らかの運動を行って筋肉量を増やし、燃焼工場自体の数を増やすことが必要です。
また、糖質たっぷりの食生活を改めることも欠かせません。糖質をたくさんとると、それだけ脂肪酸も多く作られる。脂肪酸の量がそれを燃焼する量より多ければ、だぶついた分は中性脂肪として、蓄積されてしまいます。
ミトコンドリアのエネルギー産生機能を高める、すなわち燃焼工場の効率を上げるのに役立つのが、前回お話したビタミンB群。ビタミンB群は補酵素としてエネルギー産生サイクル(TCA回路、クエン酸回路)をぐんぐん回していく役割を担っているので、不可欠な栄養素です。
体の酸化を防ぎ、代謝サイクルをより高めていくために、ミトコンドリア内でさらにエネルギー産生を促す「コエンザイムQ10」、「αリポ酸」も合わせると、最強の組み合わせになります。
ダイエットを始めよう、と決意したあなたへのメニューとして、私のクリニックで処方している目安を紹介します。
- 食事では意識して赤身肉をとる。(カルニチンの摂取)
- カルニチンを1日500~1000mgとる。(脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ)
- ビタミンB群を1日4000mg、プラスαとして、αリポ酸を1日200~600mg、コエンザイムQ10を1日300~900mgとる。 (ミトコンドリアのエネルギー産生機能を高める)
- 体を動かす習慣を心がけて、筋肉量を増やす(ミトコンドリアの総数を増やす)
摂取量の幅が広いのは個体差が大きいためです。国内で流通しているサプリメントでは配合量が少ないので、1日数回に分けて摂取するようにしてください。カルニチンは多く取り過ぎると、吐き気や嘔吐、腹部痙攣、下痢、“生臭い”体臭などの副作用を起こすことがわかっています。厚生労働省は摂取上限を1日当たり1000mgに定めていますが、クリニックでは患者さんの状態を見ながら1000mg以上出すこともあります。
運動習慣は、忙しい毎日だとなかなか取り入れられないものですよね。筋肉を増やしたいときは、歩くのが最も手軽で効果的な方法です。人間の体で最大の筋肉は、太ももにある大腿筋。私は夕食後に、太ももをしっかり使うよう意識しながら15~20分早歩きをするよう心掛けています。もちろん最初は5分でもいい。慣れてきたら10分、15分と増やしていくといいでしょう。
なかなか歩く機会がとれないときは、お風呂の中での簡単トレーニングをお薦めします。インナーマッスルを意識しながら深呼吸を繰り返したり、浴槽の中で両脚を揃えて股関節から上げ下げするなど、ちょっとした意識で筋肉に刺激を与えることができますよ。
カルニチンをサプリメントで補い、脂肪の燃焼効率を高めていけば、代謝サイクルも活性化して、体はすっきり、疲れもすっきり回復しやすくなっていきます。
(まとめ:柳本 操=フリーライター)
松倉クリニック&メディカルスパ(東京都渋谷区)院長・医師
