他人からすると迷惑でしかないイライラ。その矛先は時に、職場の人やパートナー、子どもや高齢者に向けられます。イライラしていることに気付いたら、それは「感情からのSOS信号」ととらえ、背負い込んでいる疲労をいやすことに努めましょう。

震災直後から全国を回り、カウンセリングを続けてきましたが、被害を受けた地域でも、そうでない地域でも共通して「イライラしている」人が増えている、と感じた時期があります。
ちょうど震災から1年が経過したころのことです。特定の人との人間関係を悪くしているクライアントに「無理はないですよ。今は震災のせいでみんながイライラしてるんですよ」と話すと、「えっ、だってずいぶん前のことじゃないですか」と驚かれました。でも、本当なのです。大きな出来事による、さまざまな心の後遺症は、出来事から半年、1年たったころまで長引くことが多いのです。もっと言うなら、今でも、多くの人が影響を受けています。
震災のようなショックな出来事を経験すると、人は神経過敏になり、不安になります。少し揺れるだけの地震にも非常に敏感になり、情報を絶えず求める。常に警戒のアンテナを立てているので、心身のエネルギーを絶えず消耗し続けています。ただ、数カ月間は緊張感のほうが強いため、比較的元気かつ冷静に活動ができるものです。しかし、その緊張感がゆるんだときに、大きな疲労感やイライラを感じるようになります。
消耗するとイライラするのは、人間に共通する本能的なプログラムです。弱っているときは敵に付け込まれやすいので、イライラすることで自分の命を守ろうとします。また、自分でもわけのわからないイライラは、自分の仕事を増やす原因となる職場の人やパートナー、あるいは怒りを向けても反撃しない子どもや高齢者などに向くことが多いのです。
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- イライラの原因は疲れの可能性も