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自分のこころのトリセツ

「人前で話すのが怖い」 こんな時どうする?

本番では、100点ではなく30点に到達できればよしとしよう

 下園 壮太=メンタルレスキュー・インストラクター

「人前で何かをする」「もしも失敗したら誰かに迷惑をかけたり自分の評価が下がったりする」―。このような時に多くの人は“あがって”しまいます。あがってしまうことへの不安を自覚したときには、「必要な対策をやっておけというサイン」だと前向きに受け止め、やるべき準備やリハーサルを淡々とこなしましょう。そして本番では、「つっかえながらも、何とか最後まで話せた」といったレベルで大丈夫。「100点満点で30点に到達すればOK」だと思うと気持ちが楽になります。

人の本能は、自分が自覚している以上に他の人間の反応を怖がっています。だから「人」を意識すればするほど不安は高まり、“あがる”感情も強まってしまいます。(©hxdbzxy-123RF)
人の本能は、自分が自覚している以上に他の人間の反応を怖がっています。だから「人」を意識すればするほど不安は高まり、“あがる”感情も強まってしまいます。(©hxdbzxy-123RF)

 人前でのスピーチやプレゼンテーション、会議での発言などで、「あがる」感情に困ってしまうことがあります。

  「あがる」という感情は、一見、現代人特有の感情のように見えますが、実は原始人だったころの「本能」と密接につながっているのです。あがったときの体の反応と照らし合わせると、その仕組みがよくわかります。

 手に汗をかくのは、石ころや枝などの武器をぐっとつかんで敵への戦闘能力を高めるためです。また、けがをしたときの出血に備えて血液の粘度が高まり、ドロドロの血液を押し出すために血圧が上がり、心臓もバクバクします。本来は消化に使うべきエネルギーを防衛対策に総動員する必要があるので、胃腸など消化器の働きはストップし、空腹も忘れてしまう。唾液分泌が止まり、口もカラカラに渇きます。

 さらに、攻撃に弱い「のど」や「お腹」を守るために、肩が上がって前傾姿勢になります。このようなときに論理的に考えていては「攻撃するか逃げるか」という一瞬の選択が遅くなってしまいます。そのため、論理的思考が麻痺し、経験や勘だけで行動してしまいがちです。また、力を使う大きな筋肉を動かす準備をしているので、手先の細かい作業もできなくなります。確かにあがったときは、記憶が飛んでしまったり、手元が震えて書類を落としたりするものです。

 このように、敵と出会ったときに無意識に起こる「自衛反応」のことを私は「驚き・興奮プログラム」と呼んでいます。このプログラムが「あがり」の感情を引き起こす正体ともいえます。人前で話すことは殺される危機でもないのに、同じプログラムが発動してしまい、本番の2週間も前から緊張や胃痛が続き、お腹を壊す、肩こりや腰痛が悪化する、といった体の不調も起こります。

 また、あがるような出来事は「人前で何かをする」ときや「もしも失敗したら誰かに迷惑をかけたり自分の評価が下がったりする」ときであることが多いものです。人の本能は、自分が自覚している以上に、他の人間の反応を怖がっています。だから、「人」を意識すればするほど不安が高まり、「あがる」感情も強まってしまう。嫌だな、と思うほど、このような困ったスパイラルが拡大してしまうのです。

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