周囲から「もう十分、がんばれているよ」と言われても納得できず、「まだがんばりが足りない、こんなんじゃダメ」と思ってしまう人がいます。自分に常にダメ出しをしている人は”子どもの心”が強すぎる状態。ダメな自分も認めて、ほどほどをよしとする”大人の心”の出番も必要です。

困難に直面したとき、あなたはいつもどう対処するでしょうか。自分のがんばりが足りないせいだ、どこか悪いところ・反省すべき点があったはずだと、さらに自分にムチを打ってはいないでしょうか。
ある目標を達成するには、以下の2通りの方法があります。
「自分の能力レベルを高めること」と、「目標のレベルを下げること」。目標レベルを下げるなんてとんでもない、と思う人も多いでしょう。目標に向かってとことん頑張る、あきらめてはならない。そんな考えが「子どもの心の強さ」です。
この先どんな環境に身を置くかもわからない子ども時代は、能力を高めることが生き残るための最大の戦略でした。実際に、やればやるだけ達成感が得られる時期です。縄跳びの練習をすれば記録は伸び、勉強すれば知識も増える。やればできるという成功体験を積んで世の中への安心感を得ていくことは、子ども時代に大事なことです。
ところが、大人に近づくにしたがって「がんばってもクリアできないことがある」と気づき始めます。たとえば、受験。がんばっても合格するとは限りません。そして、恋愛。どんなに策を練っても思いが報われる保証はない。複雑な人間関係に惑わされることも増えてきます。理不尽な思いをし、“プチ挫折”を繰り返すうちに、畑を耕すようにゆっくり育ってくるのが「大人の心の強さ」です。
プチ挫折をしたとき、傷つくけれど「大丈夫、自分には合わなかっただけだよ」と自らを励ますことができるのが、大人の心の強さです。本来、挫折を味わう中で自然に身につけることができるのが大人の心ですが、最近は社会全体に「困難を事前に避けようとする」雰囲気が強まり、プチ挫折を体験する機会を奪われることによって、大人になって初めて大きな挫折を経験する人も多いようです。
大人になって初めての挫折となると、立ち直りには多大なエネルギーを使います。思春期なら、受験に失敗しても失恋しても、落ち込みはするけれど立ち直りは結構早いものです。ところが、30代になって初めて失恋、離婚、退職といった挫折に遭遇すると、痛手は大きいもの。社会全体が恐怖の対象になり、引きこもってしまう人もいます。
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