私たちが現代社会で生きていくためには、お金が必要です。しかし、お金のことを考えるうちに、ときにはお金がその人の自信を揺るがすことがあります。極端にお金が足りないわけではないのに、お金対する不安感が高まるときは、その不安の大きさを現実的なサイズに落とし込んでみましょう。

生きていくうえの「自信」と「お金」が、強くつながってしまいがちな現代。お金がないとどうしても心が乱され、不安になってしまうものです。
給料が少ない、ボーナスが減った、貯蓄額が少ない…こんなことが話題にあがると、暗くなる。あるいは、お金のことを考えるとネガティブになるだけだから、いっそのこと考えないようにしている人もいるかもしれません。
実は、うつ状態になると、お金のとらえ方にもゆがみが生じやすくなります。
たとえば、銀行にまだ十分な残高があるのに「自分はどんどんお金を失っている」とか、「自分は大損をしてしまった。今あるお金だけでは、この先、絶対にやっていけない」とかたくなに思い込んでしまいます。
精神医学ではこのような状態を、“貧困妄想”と呼びます。
そこまでいかなくても「疲れたな」とか、「むなしいな」と感じているときにお金のことを考えると、どんどんネガティブになってしまうものです。なぜなら、心身のエネルギーの低下と自信の低下、そしてお金に対する不安は、互いに密接に関わっているからです。
人が毎日、元気に生きるベースとなるのは「この先、自分は生きていける」という自信です。
たとえば、原始時代の人間の自信のベースは体力でした。当時は15歳にもなれば体力的には一人前です。動物を仕留めることができるし、農作業もできる。集団の中で一人前と見なされる、ということは、その人の揺るぎない自信となりました。
ところが現代は、もはやそんなシンプルな時代ではありません。体力は必要とされない代わり、生きていくための糧も、着る服も、すべて「お金」がないと手に入れられません。人の自信や存在価値を「お金」が握るようになってしまったのです。