日経グッデイ

自分のこころのトリセツ

「仕事に集中できない」 こんなときどうする?

自分のリズムで「最もはかどる」 時間帯を見つけよう

 下園 壮太=メンタルレスキュー・インストラクター

「最近、全然集中できない」「そわそわして仕事が進まない」—。そう感じたときに、無理に集中しようとするのは逆効果。まずは、深呼吸をしながら自分を落ち着かせてみましょう。自分が集中しやすい時間帯に合わせて仕事に取りかかるのも良い方法です。でも、がんばり過ぎは禁物です。休憩をうまく織り交ぜながら仕事に取りかかりましょう。

集中できても、がんばりすぎはNG。(©THEERAVAT BOONNUANG-123rf)

 集中しなくてはならないのに、他のことに気が散って仕方がないときがあります。

 実は人間の本能からすれば、集中することは「危険なこと」。たとえば周囲に猛獣がウロウロしているのに木の実を拾うことに集中していたら、簡単に襲われてしまいます。常に敵の存在を意識してしまうのは本能のしわざ。そう考えれば、気が散るのは無理のないことなのです。

 そうは言っても、現実社会では、何かに集中しなければならないシーンがたくさんあります。「以前は集中できたのに最近、全然集中できない。すごくやりたい仕事なのにどうしてだろう…」と感じたら、それは疲労が積み重なった結果、あなたがうつ状態になりかけているサインなのかもしれません。

 人間はうつ状態になると、自分の命を守るために警戒レベルを高め、ネガティブな情報、つまり身の危険に関わる情報を集めようとします。そのため、周囲の物音や人の気配にこれまで以上に敏感になってくるのです。このような状態で仕事に集中することはとても難しく、それでも「集中しなきゃ」と意識でねじ伏せようとすると、無意識はますます暴走して不安感を高めます。そして、そんな自分に対して自己嫌悪感を抱く人もいます。

 うつ状態、とまでいかなくても、そわそわして仕事が進まないときもありますね。そんなときは「大丈夫、落ち着いていいんだよ」と無意識の自分を落ち着かせてやるといいのです。最も効果的なのが深呼吸です。

 徐々にゆっくりと呼吸を深くする。それだけに集中すると、お腹の底から「自分は大丈夫」というどっしりとした感覚がわいてきます。こうやって準備態勢を整えることによって、スムーズに仕事にとりかかれるようになってきます。

調子のいい波をうまくつかまえるのがポイント

 食欲や睡眠、体温などと同じように、人間の集中レベルにも波があります。

 高い集中状態を長時間キープできれば理想ですが、不可能です。集中力は気合次第、などと思っている人は、「集中できないのは努力が足りないせい」と自分を追い込んでしまう傾向があるので気をつけてください。

 もともと人間には波があるのですから、集中の波が落ちているときは何をやってもダメなのだと割り切ることも大切です。

 一晩中考えてもダメだったのに、翌朝歩いているほんの数分の間に、ぱっと思考がつながった、という経験は誰にもあるはず。波をコントロールするのが難しいからこそ、調子のいい時間帯に大事な仕事をもってくるのも賢いやり方です。

 そのために、自分の1日をあらためて観察して「この時間が一番はかどる」というポイントを探してみましょう。

 私自身は、クリエイティブな発想が必要な仕事は午前中に行い、午後はあまり頭を使わない事務仕事や打ち合わせ、というふうに仕事を配分するようにしています。

 頭がよく働く時間帯に取り組むともったいないような気がする単純作業も、午後に行うようにすると「集中しにくい今の時間にやるのに最適の仕事だな」と気分よくできるものです。

 注意したいのは、集中できても、がんばりすぎないこと。たとえ好きなことだとしても、人間が集中力を持続できるのはせいぜい1時間程度です。1時間たったら休憩を10分とり、また1時間がんばる、というふうにメリハリをつけるのが集中力を維持するためには大切なことです。

 調子がいいからといって何時間もがんばってしまうとどうなるでしょう。疲労が積み重なり、最後にはぐっとブレーキがかかります。すると、無意識は「嫌な仕事をさせられた」と記憶して、次にとりかかろうとしたときに、すごくおっくうになったり、集中モードに入りにくくなったりするのです。

 ある軍隊での行軍の実験でも「1時間歩いて10分休む」「3時間歩いて30分休む」「6時間歩いて60分休む」の3パターンで比較したとき、休む割合は同じでも疲労レベルはまったく異なり、1時間に10分の休憩がベストである、という結果が得られました。

 休憩のとり方は、疲れの性質によって分けてみるといいでしょう。全身がくたくたに疲れているときは全身を休ませてください。思い切って15分間くらい寝てしまうのが効率的です。

 一方、パソコン作業や思考する作業などで脳の一部分がくたびれた、という実感があるときは、運動、おしゃべり、飲み物を飲むなど、体に何らかの刺激を送ると、頭がすっきりし、リフレッシュすることができます。

[まとめ]頭が最も働く時間帯をうまく活用しよう。休憩も忘れないで
(1)疲労や不安感を和らげてみる

気持ちがそわそわ、ざわざわとしてなかなか仕事にとりかかれない。そんなときはエネルギーが低下しているのかもしれません。まずは休息をとることが大事です。また、深呼吸も無意識の「不安感」を緩めるのに効果的です。ゆっくりと少しずつ深くしていく感覚で、呼吸を繰り返してみましょう。

(2)調子のいい時間帯をうまく使う

集中力には1日の中でもリズムがあります。多くの人の場合、頭が冴えて最も集中できるのは午前中。連日残業するよりも、しっかり睡眠をとって朝早くから仕事をスタートするのがお薦めです。集中できる時間帯に大事な仕事を、それ以外に単純作業をというふうに、うまく振り分けてみましょう。

(3)がんばりすぎず1時間ごとに休憩する

「調子がいいから」といって、何時間も休憩なしでがんばりすぎると、後でツケが回ってくるので気をつけましょう。無理をすると、がくんと集中力が落ちます。すると、次の立ち上がりに時間がかかり、結果的には非効率になります。1時間に1回は休憩時間をはさむのが、集中力を維持するコツです。

(まとめ:柳本 操=フリーライター)

『学校では教えてくれない 自分のこころのトリセツ』(日経BP社、2013年9月発行)より転載


下園 壮太(しもぞの そうた)
メンタルレスキュー・インストラクター
下園 壮太(しもぞの そうた) 1959年鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。筑波大学で心理学を学ぶ。1999年より陸上自衛隊初の心理幹部として、多くのカウンセリング経験を積む。陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官として、衛生科隊員(医師・看護師など)にメンタルヘルス、自殺予防、カウンセリングなどを教育する。惨事ストレスに対応するMR(メンタル・レスキュー)インストラクター。2009年に第8回「国民の自衛官」に選ばれる。「学校では絶対に教えてくれない 自分のこころのトリセツ」(日経BP社、2013年9月発行)などの著書がある。

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