ひと昔前と違い、携帯電話や電子メールなどから常に追われて生活している私たち。いつでも連絡が入るから気が抜けない…そんな状況では、本人も気付かないうちにエネルギーを消耗し、疲労をため込んでいってしまいます。すると、休みたいのに「休めない」「休むなんて周りに人には言い出せない」と思うようになってくるもの。しかし、そのような時こそ、休息が必要です。周囲の理解を得た上で“真の休息”を取れるように心がけましょう。

がんばっているのに物事がうまく回らない。疲れもたまってきたし気分も落ち込みがち。そんなときに身近な人から「休んだほうがいいんじゃない?」とアドバイスされたら、あなたならどう答えるでしょうか。
「うん、ちょっと休んでみようかな」と言えるなら、ひとまず大丈夫。でも、うつっぽくなるにしたがって、人は「いや、休めないよ」と言い始めます。今休んだらクビになる、信頼を失ってしまう。休むなんてありえない、と思い込むのです。
うつ状態といえば、食欲低下や不眠などの症状が知られています。実はそれ以外にも、うつの人が社会に出ることで表面化する症状があり、私はそれを「うつの社会的症状」と呼んでいます。その代表格が「休めない」こと。加えて「対人恐怖」も強くなり、「休むなんて、とても周囲の人に言い出せない」と考えてしまうのです。
現代人のうつ状態の8割以上は「知らないうちに積み重なった蓄積疲労」が原因、と私は考えています。特に、引っ越しや異動などで環境が変化すると、自分では気づかないうちに疲労がたまっていきます。しかも現代がひと昔前と大きく異なるのは、携帯電話やネットなどから膨大な情報が絶えず入ってくること。いつでも連絡が入るから気が抜けないし、ネットの情報はちゃんとフォローしておかないと乗り遅れてしまう。情報にさらされるということも、思った以上にエネルギーを消耗するのです。このような環境下で、ゆっくりとうつに進行していく人が増えています。
さまざまな年代の中でも、若者が休めない理由にはもう一つ、「焦り」が関わっています。たとえば10歳の子にとっての1年間は、生きてきた年月の10分の1に値します。そう考えると、50歳の人間が考える「1年間」よりも、若い世代の1年間ははるかに濃いのです。そんな若い世代にとって、1~2カ月休むことが、「キャリアを失う」という不安に直結するのは必然ともいえます。
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