ED(勃起不全)は幅広い年齢層の男性が持つ悩みのひとつです。加齢も関係しますが、ストレスやお酒の飲みすぎ、運動不足、喫煙などの生活習慣が原因となる場合もあります。対策というと、バイアグラなどのED治療薬がよく知られています。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「それらの薬は一時的な症状改善には有効性がありますが、副作用の出る人、また健康的で自然な性機能の回復を望む人は、漢方薬で健全な心身の状態を取り戻し、EDの根本的な改善を図るといいでしょう」と話します。
「このところED気味です。パートナーにきついことを言われて以来、不調です」

Aさんは、彼女に言われたある言葉をきっかけに、自信がなくなりました。性交に集中できず、気が散ってしまいます。いらいらしやすく、のぼせがちで、寝つきがよくありません。紅色の舌に黄色い舌苔が付着しています。
ED(勃起不全)は幅広い年齢層の男性が持つ悩みのひとつで、患者数は、成人男性の4人に1人、50~60代では2人に1人にのぼるともいわれています。
EDの原因として、もちろん加齢もありますが、よくみられるのは精神的なストレスや不安、うつ、あせりなどによる心因性EDです。ほかには食事の不摂生、アルコール類の飲みすぎ、運動不足、喫煙などの生活習慣が原因となる場合もあります。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気の影響でEDになることもあります。
西洋医学の門をたたけばバイアグラ、シアリス、レビトラなど即効性のあるED治療薬があり、一時的な症状改善には有効性があります。ただし、それらの薬で副作用の出る人、あるいは健康的で自然な性機能を回復させたい人などは、漢方薬を服用して健全な心身の状態を取り戻すことにより、EDの根本的な改善を図るといいでしょう。
ED(勃起不全)と関係が深いのは、腎・肝・心・脾
人の生殖機能は、五臓の腎(じん)に含まれます。腎の機能(腎気)は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどることです。
漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』をみると、男性の生殖機能は8年周期で変化する、とあります。たとえば16歳で射精できるようになって子どもがつくれるようになり、24歳で腎気が強くなり、32歳で腎気が充実します。そして腎気は40歳で弱り始め、56歳で衰え、64歳になると腎がつかさどる歯も髪も抜け落ちる、とあります。40歳を過ぎると男性の性機能は年齢とともに衰えていくのは、ある程度は自然なことです。
このように腎と関係が深い性機能ではありますが、EDの原因は、この腎の不調だけではありません。精神情緒と関係が深い肝(かん)、意識と関係が深い心(しん)、エネルギーと関係が深い脾(ひ)の不調によってEDとなる場合も、多くみられます。漢方では、これら腎・肝・心・脾の機能を調えることにより、ED の治療をします。
EDの多くを占める心因性EDだけでなく、糖尿病などによって生じる血管や神経の障害が原因となって起こる器質性EDに対しても、漢方薬で対応できることは可能です。
漢方薬は、EDの根本原因を改善し、治療していく薬です。一時的な効果や即効性を求める精力剤とは異なります。安定した心身の状態を取り戻すことによりEDをじっくりと改善していきたいなら、食生活の改善や禁煙、生活のリズムの見直しなどとともに、漢方薬を服用するといいでしょう。