皮膚の新陳代謝が過剰になり、古い角質が積み重なり、フケのようにぼろぼろと剥がれ落ちるといった症状が出る乾癬(かんせん)。発症する原因は明らかになっておらず、免疫機能の異常や糖尿病、脂質異常症なども関与していると考えられています。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、乾癬による病変だけでなく、根本にある患者の体質の両方をみて治療を進めます。漢方薬で患者の体質を改善することにより再発や悪化を減らしていきます」と話します。
「尋常性乾癬に長年に渡り悩んでいます。皮膚科で治療をしてきましたが、よくなったりわるくなったりを繰り返しています」

Aさんの乾癬は、腹部や太ももに出ています。状態がよくなったと思って外用薬を塗るのを止めると、皮疹がまた赤くなり、症状が悪化します。肥満ぎみで、会社の健康診断では毎年、中性脂肪が多いと指摘されます。便秘がちで、腹部に膨満感があります。舌は紅く、黄色い舌苔が付着しています。
人体のなかで最も大きな臓器である皮膚の役割は、外界からの刺激(乾燥、紫外線など)から人体を守り、細菌やウイルスの体内への侵入を防御すること(免疫機能)です。この機能を維持するために、体表では常に新しく新鮮な皮膚の細胞が作られ、古くなった外側の皮膚細胞(角質)は細かい垢(あか)となって剥がれ落ちています(ターンオーバー)。
ターンオーバーは通常、約28~40日で繰り返されますが、皮膚(表皮)の細胞が異常に増殖すると、皮膚の表面に角質が積み重なり、皮膚が厚くなり、古くなった細胞がフケのようにぼろぼろと剥がれ落ちる状態になります。これが乾癬です。乾癬の患者さんのターンオーバーは通常の約10倍の速さで、周期は4~5日と極端に短くなっています。
乾癬はいくつかの種類がありますが、その多く(約9割)は尋常性乾癬です。尋常性乾癬以外には、乾癬性関節炎、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬があります。
尋常性乾癬は、皮膚が赤くなり(紅斑)、盛り上がり(浸潤・肥厚)、その表面を銀白色の細かいかさぶた(痂皮:かひ)が覆い(鱗屑:りんせつ)、それがフケのように剥がれ落ちる(落屑:らくせつ)、という症状がみられます。痒みや、爪の変形を伴うこともあります。一般に乾癬といえば、この尋常性乾癬を指します。
乾癬が発症する原因はまだ明らかになっていませんが、免疫機能の異常(自己免疫反応)や、ストレスや乱れた食習慣などの外的因子、さらに肥満や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの内的因子が関与しているのではないかと考えられています。
西洋医学では、炎症を抑えるステロイド外用薬や、表皮細胞の過剰な増殖を抑制する活性型ビタミンD3外用薬などの外用薬で症状を抑える外用療法が中心となります。外用薬で症状を抑えられない場合は、光線療法(紫外線照射)や内服療法、生物学的製剤なども使われます。