喘息(気管支喘息)は、炎症などにより気管支が狭くなり、呼吸困難、咳、痰などの症状が生じる疾患です。主な原因はアレルギーですが、過労、ストレス、冷えなどによっても引き起こされます。大人になってから喘息にかかることもあります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「喘息の治療薬には、発作時に症状を抑える対症療法薬と、体質改善や予防の目的で服用する薬があります。漢方が得意とするのは後者。漢方薬により根本的な治療を進めていきます」と話します。
「小さいころから気管支喘息で、ずっと喘息の薬や吸入を使ってきました。中学のころに一旦治りましたが、20歳代になってから、また発症しました。疲れやすく、あまり元気がありません」
Aさんは、子どものころから疲れやすく、おとなしい子でした。食が細く、軟便ぎみです。白い痰が出ます。疲れがたまったときや、季節の変わり目などに、息が苦しくなり、喘鳴(ぜんめい)が生じます。ぽってりと大きめの白い舌の上に、白い舌苔がべっとりと付着しています。
喘息(気管支喘息)は、炎症などにより気管支が狭くなり、呼吸困難、咳、痰、喘鳴などの症状が生じる疾患です。炎症を繰り返すことによって気道が過敏になっており、ちょっとした刺激で気管支が狭まります。多くはアレルギーによって起こりますが、過労、ストレス、運動、気圧の変化、冷えなどによっても引き起こされます。
喘息の治療薬には、喘息発作時に症状を抑える対症療法薬と、発作が起きていないときに体質改善や予防の目的で服用する薬の2種類があります。
漢方では、発作が起きていないときにも根本的に「喘息体質」を改善し、喘息発作が起きないようにしていく治療を重視しています。漢方が得意とするのは、発作を繰り返さないように根本的な治療を進めていくことです。
喘息と関係が深いのは、痰の存在

喘息のことを中医学では哮喘(こうぜん)と呼んでいます。発作性の喘鳴や呼吸困難を伴う呼吸疾患が哮証(こうしょう)で、喘鳴を伴わない呼吸困難が喘証(ぜんしょう)ですが、同時に生じることが多いため、まとめて哮喘と呼びます。
喘息の根本原因は、胸中の痰(たん)の存在です。漢方において、痰とは、気管から出る粘液性の分泌物のことを指すのではなく、正常ではない病的な体液全体を指します。漢方薬により余分な痰が排除されれば、根本的な「喘息体質」の改善が進み、ダニ、ハウスダスト、たばこの煙、台風の接近などの刺激が来ても、喘息の発作が生じることはなくなります。
痰は、本来正常な人体に必要不可欠な体液(津液:しんえき)が停滞することにより、生じます。痰の発生には、五臓の肺、脾、腎の機能失調が深く関与しているため、これら肺、脾、腎の機能を正常化することが、「喘息体質」治療の要となります。
*1 体内の水液調節について、漢方では三焦(さんしょう)という概念でとらえています。三焦は五臓六腑(*1)のひとつで、全身に広がってすべての臓腑を包み込む膜状の組織です。気や津液は、この三焦を通って全身を流れます。
飲食物から得られた水分は、まず五臓の脾で津液として吸収されます。そして五臓の肺に運ばれて全身に散布され、生命活動に使われます。その後、五臓の腎まで下降し、排泄されます。有用な津液は、再び肺に運ばれます(蒸騰気化)。五臓の肝(かん)は、この水分の流れ全体の調節をします。これら体液の流れは、すべて三焦を介して行われており、これを三焦気化(さんしょうきか)といいます。
痰は、この三焦気化がスムーズに機能しなくなったときに、津液の流れが滞ることにより、発生します。したがって、痰の発生には、五臓の脾、肺、腎が深く関係しています。漢方薬でこれらの臓腑の機能を改善すれば、痰が消失し、「喘息体質」が改善され、喘息が根本的に治ります。