閉経を迎える年齢でもないのに月経が来ない「無月経」。放置していると、妊娠しにくくなるほか、女性ホルモンが少なくなるため、骨量が減少し骨粗鬆症のリスクも高まります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方で無月経と関係が深いと考えられているのが、人体を流れる構成成分のひとつ『血』です。そして血の流れを推動する『気』の失調や、五臓の『腎』も関係します。これらを補う漢方薬で治療を進めます」と話します。
「20歳前後の頃にダイエットを繰り返しているうちに、生理が来なくなりました。それ以来ずっと婦人科で処方されるピルで生理を来させてきましたが、結婚して妊娠に向けてピルをやめたところ、また生理が来なくなりました」

Aさんは、疲れやすく、元気がありません。食欲があまりありません。目も疲れやすく、かすみがちです。ときどき頭がふらつきます。白っぽい色の舌をしています。
無月経は、妊娠中や授乳中ではないのに、あるいは閉経を迎える年齢でもないのに、3か月以上にわたり月経が来ない状態です。18歳になってもまだ初潮を迎えない場合も、無月経のひとつです。無月経の場合、当然ですが排卵はしていません。
無月経を放置していると、将来妊娠しにくいからだになってしまいます(不妊症)。また女性ホルモンが少ないため、骨量が減少し、将来にわたり骨粗鬆症となる確率が高まります。心血管障害も生じやすくなります。
将来妊娠を希望するなら、体質改善をして自力で排卵でき、安定した月経が来るようになる必要があります。そのようなときに、「自力で月経を起こさせることができる体質」に向けて漢方薬が使われます。
なお、ピル服用中の出血は、月経ではなく、消退出血と呼ばれるものです。消退出血は、卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンの血中濃度が減少したときに子宮内膜が剥がれて生じる出血です。
低用量ピル(経口避妊薬)にはエストロゲンとプロゲステロンが配合されており、服用中は脳が「妊娠した」と勘違いするため排卵が停止し、休薬期間に入ると女性ホルモンが減少するので消退出血が起こります。ピルはこのように人工的に排卵を抑制し月経をコントロールする薬ですので、無月経そのものを治療しているわけではありません。まれに長期間服用後の卵巣機能不全や、子宮頸がんや乳がんの発症率の上昇、血栓塞栓症などの副作用が生じます。
無月経と関係が深いのは血や五臓の腎
無月経と関係が深いもののひとつは、「血(けつ)」です。血は、人体を流れる構成成分のひとつで、血液や栄養のことです。この血の量が減ったり流れがわるくなったりすると、月経が来なくなります。血の流れを推動する「気」の失調も、無月経に関係してきます。
五臓の腎(じん)も無月経に関係があります。腎の機能(腎気)は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどることです。また「腎は血を生ず」といい、血を生み出す臓腑のひとつでもあります。この腎気が失調することにより、無月経が生じます。
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