中高年齢層になると、男女ともに悩む人が増えてくる尿失禁(尿もれ)。「長い会議、長距離のバス移動などが不安…」という人も少なくないでしょう。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方で尿失禁と関係が深いのは五臓の腎や肝です。漢方薬でこれらの機能がスムーズに働いていない状態を改善していきます」と話します。
「家が近づくと気が緩んでしまうのか急に尿意が起こることがあります。我慢できなくなって家の前で失禁することもあります。とくにお酒を飲みすぎたときに尿がもれることが多いように思います」

Aさんは、帰宅してトイレにたどり着いてもパンツをおろすのが間に合わずもらしてしまうこともあります。日頃から飲酒を好み、脂っこいものや味の濃いものを好んで食べます。舌は紅く、黄色い舌苔がべっとりと付着しています。
尿は正常な場合、無意識で膀胱にたまり(蓄尿)、膀胱に尿がたまったら尿意が生じます。尿意を得たあとはトイレに行くまで我慢したり、そのあとは意識的に排出(排尿)したりします。尿意を覚えていなくても、出かける前などに意識的に排尿することもできます。これらの機能が損なわれ、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまうのが、尿失禁(尿もれ)です。
排尿のコントロールは、おもに自律神経系がしています。膀胱にじゅうぶん蓄尿されていない状態では交感神経の働きにより、膀胱の筋肉が緩み、尿道の筋肉は逆に締まり、その結果、尿が漏れることなく膀胱に溜まっていきます。そして尿が溜まって尿意を感じ、いざ排尿する段になると今度は副交感神経が優位になり、尿道の筋肉が緩み、膀胱の筋肉が縮むことにより、排尿されます。この自律神経系が失調すると、尿失禁が生じます。
自律神経系とは別に、加齢によっても尿失禁は増えます。40歳代でも男性の2割、女性の3割以上が尿失禁を経験しているという調査結果もあります(2017年花王調べ)。女性の尿道は短くまっすぐなのに対し、男性の尿道は長くて曲がっているなどの理由により、女性のほうが多く尿失禁を経験します。若い女性にも尿失禁の経験者は少なくありません。男性の場合は尿道の折れ曲がった部分に尿が残り、それが排尿後に垂れることもあります。
加齢によって増える尿失禁には、尿道のまわりにあって尿道を締めて排尿をコントロールする筋肉(骨盤底筋)の機能低下(弱まり)や、膀胱弾力性の低下が関係しています。膀胱の弾力性が失われてあまり蓄尿できなくなっているのに追い打ちをかけるように膀胱の出口が緩く締まりがわるくなってしまうため、排尿が我慢できなくなるのです。