体型に関する悩みは、ぽっちゃりばかりではありません。痩せすぎの人や太れないという人の悩みも切実です。体重が少ないと、疲れやすい、免疫力が弱く感染症などの病気になりやすいといった不調が現れます。「漢方では、消化吸収をつかさどる『脾胃(ひい)』のバランスの崩れによって、食べたものが肉にならない体質になったと考えます」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「子どものころから痩せています。食欲がなく、あまりお腹が空かないせいか、食べても、なかなか太れません。疲れやすく、よく風邪を引きます。体重を増やして元気になりたいと思っています」
身長170cm、体重50kgのAさんは食べても、すぐにお腹が張るそうです。胃腸が弱く、便は軟らかめで、よく下痢をすると話していました。「太りたいがために、無理してたくさん食べてもすぐお腹をこわし、意味がありません」とのこと。疲れがひどい時は、階段の昇り降りで息切れするといいます。舌は白っぽい色をしています。
体型に関する悩みといえば、肥満ばかりが取り上げられますが、痩せすぎや太れないと悩む人も少なくありません。「体重を増やして体力をつけたいのに、いくら食べても太れない」「小さい頃から体が弱く、すぐ風邪を引いたり、お腹をこわしたりする」など、悩みはさまざまです。
見た目のことで悩んでいる人もいます。貧弱に見える、水着や洋服が似合わないなど、痩せすぎの体にコンプレックスを抱いている人も少なくありません。
痩せすぎの主な原因は、五臓の脾胃の機能低下

体重が少なすぎると、体力がない、抵抗力がない、疲れやすい、免疫力が弱く感染症など病気にかかりやすいなどの不調がよくみられます。ほかには、冷え症、不妊症、月経不順、無月経、栄養失調、骨密度の低下、うつ病などの疾患との関連も気になります。
漢方で体重と関係が深いのは、人体の機能的単位である五臓六腑(*1)のうちの「脾胃」(ひい)です。主に、飲食物の消化吸収をつかさどる臓腑です。
*1 五臓六腑の五臓とは、体の機能を「肝」「心」「脾」「肺」「腎」という5つに分けたものです。六腑は、内側が空洞になっている6つの器官「胆」「大腸」「小腸」「胃」「膀胱」「三焦(さんしょう)」のことを指します。
まず六腑の一つである「胃」が、飲食物を受け入れ(受納:じゅのう)、消化し(腐熟:ふじゅく)、人体に有用な形(清:せい)に変化させます。清は、五臓の一つ「脾」に渡され、残りのかす(濁:だく)は下の「小腸・大腸」に降ろされます(降濁:こうだく)。
「脾」は、「胃」から清を吸収して五臓の「肺」に持ち上げ(昇清)、気血(エネルギーや栄養)を生成し、全身に運びます(運化)。
「脾」の機能(脾気)がバランスを崩すと、運化にも影響を及ぼすので、お腹が空かない、食べなくても平気、すぐお腹が張るなどの症状が生じます。一方、胃の機能(胃気)がバランスを崩すと、受納機能が低下するので、食べられない、食べ物がのどを通らないなどの症状が表れます。
「脾」には、ほかに肌肉(きにく)をつかさどる機能もあります。これは、脾が運化した気血が全身の筋肉などを養うことを意味しています。これらの機能が衰えると、筋肉が細くなり、痩せてしまいます。